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個人年金保険

はじめに ■税務からみた個人年金の特徴・問題点 ■保険料の取り扱い ■契約者配当の取り扱い 
資産計上した保険料等の取り崩し ■名義変更の場合の取り扱い ■各契約形態における税務処理 
経営者保険(退職金保険)型による税務上の取り扱い ■福祉厚生保険型(その1)による税務上の取り扱い 
福祉厚生保険型(その2)による税務上の取り扱い

はじめに

 平成2年の初めに,法人を契約者とする個人年金の取り扱いが大きく変わりそうだとのうわさがあった。その話の背景には,当時とくに注目を浴びていた「養老保険の2分の1損金算入」がある。つまり,法人契約の個人年金の税務処理に関して根拠とする通達等がなかったため,法人税基本通達9−3−4(養老保険に係る保険料)を類推解釈し,個人年金についても年金受取人=法人,死亡給付金受取人=被保険者の遺族の場合,普遍的加入の条件を満たしていれば,その支払保険料の2分の1を損金の額に算入することができるという考え方(ただし,従来から生保業界ではこの考え方は個人年金には適用されないというのが通説であったから,かなり無謀なものだといえる。)で販売が行われ,それが税務署から否認されたというもの。また,それと併せて法人が年金受取人となっている場合に,法人が年金を受け入れたときに取り崩す,資産計上されていた保険料積立金等の額の処理についても,問題点があるということだった。
 そして,それらの処理を含めた法人契約の個人年金の取り扱いが,平成2年5月30日付の個別通達(直審4−19(例規))により明らかにされた。この個別通達の全文は次節に掲載したが,以下,ここではその内容について改正点を中心に解説する。なお,適格退職年金や年金特約付養老保険などはこの通達の対象とはならない。

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1.税務からみた個人年金の特徴・問題点

 個人年金は,生死混合保険である点では養老保険に類似しているが,養老保険と比べると次のような特徴がある。

<1> 死亡給付金の額は保険料払込期間に応じて徐々に増加し,保険料に占める危険保険料(死亡給付金に充てられるもの)の割合が低い。

<2> 年金支払開始日前後を通じて契約者配当が支払われ,また,養老保険などの消滅時特別配当に代えて,年金支払開始日に多額の特別配当が分配されて年金の額が増加する。しかも,その契約者配当の受取人が年金支払開始日の前後で異なることがある。

<3> 満期保険金はなく,年金が支払われる。

 このような特徴点を考えると,法人を契約者とし,従業員を被保険者として個人年金に契約した場合,税務上,次のような点をどのように取り扱うかが問題となる。

(1) 保険料の取り扱い

 基本的には養老保険に係る保険料の取り扱い(法基通9−3−4)と同様に取り扱うことが考えられるが,その場合,保険料に占める危険保険料の割合が低い点をどうするか。

(2) 契約者配当の取り扱い

 契約者配当は,契約者だけでなく年金受取人もその受取人とされるが,これをどのように取り扱うか。

(3) 資産計上した支払保険料および契約者配当の取り崩し等の取り扱い

 保険料や契約者配当を原資として年金が支払われるが,年金の受け取り等に伴い資産計上した支払保険料および契約者配当の取り崩しはどのように取り扱うか。

(4) 契約者を法人から個人に変更した場合の取り扱い

 被保険者である従業員が退職等に際し契約者を法人から個人に変更した場合,被保険者である従業員に対する課税関係はどうなるか。
 通達は,以上のような点の取り扱いを明らかにしている。

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2.保険料の取り扱い

 保険料支払時の処理については,死亡給付金受取人=被保険者の遺族,年金受取人=法人の場合,普遍的加入を前提に,その支払保険料の10%が期間の経過に応じて損金の額に算入できることとされた。

(注)この取り扱いは,保険料に占める危険保険料の割合を10%として規定されたものだが,これは55歳〜65歳を年金支払開始年齢とする個人年金契約の保険料をみると,積立保険料部分の割合が平均的にほぼ90%になっていることによる。

 従来の実務処理は,個人年金保険料の中における死亡給付金に対応する保険料部分は極めて少ないことから,死亡給付金の受取人が法人であるか被保険者の遺族であるかに関係なく,年金の受取人に着目して,それが法人であれば支払保険料の全額を資産に計上,被保険者であれば全額を給与・報酬として処理していた。
 なお,年金・死亡給付金の受取人がともに法人(または被保険者およびその遺族)の場合は,従来から支払保険料の全額を資産計上(または給与処理)することとされており,変更はない。
 また,傷害特約等の特約に係る保険料の取り扱いについては,法人税基本通達9−3−6の2に準じて取り扱われる。

  ●新しい取扱い

  ●従来の取り扱い(実務上の処理)

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3.契約者配当の取り扱い

 個人年金の契約者配当については,年金支払開始日前は契約者に支払われるが,年金支払開始日以後は年金受取人に支払われる。年金受取人が従業員である場合は,従業員が契約者配当を受け取ることになる。
 そこで,通達では年金支払開始日前に支払いを受ける契約者配当と同日以後に支払いを受ける契約者配当とに分けて,その取り扱いを定めている。

(1) 年金支払開始日前に支払われる契約者配当

 配当通知を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入。  ただし,年金受取人が被保険者であり,かつ,労働協約など法人と被保険者との契約により,支払配当が年金支払開始日まで積み立てられる(同日に責任準備金に充当される。)ことが明らかである場合には,益金の額に算入しない処理が認められる。
 ところで,養老保険については,支払保険料の全額を資産に計上している場合には,契約者配当の額を資産に計上している保険料の額から控除する経理を認めている(法基通9−3−8後段)が,個人年金についてはこの取り扱いは認められない。

(注)養老保険における取り扱いは,資産計上した保険料の中に貯蓄性のない危険保険料の額が含まれていることを考慮してのもの。しかし,個人年金については,危険保険料の占める割合が,極めて少ないため,養老保険と同様に取り扱うことは問題があるとされた。

 なお,年金支払開始日に多額の特別配当が支払われる(経過期間10年以上の場合)が,この特別配当については,年金支払開始日以後に年金等として支払われるまでは法人の益金の額に算入されない。

(2) 年金支払開始日以後に支払われる契約者配当

 年金受取人が法人である場合に,通知を受けた日の属する事業年度の益金に算入。
 ただし,年金支払開始日に分配される特別配当で,それが保険会社から年金としてのみ支払われる(年金受取人に方法選択の余地がない。)場合は,益金の額に算入しない処理が認められる。
 なお,契約者配当を買増年金の一時払保険料に充当した場合には,買増年金の受け取りにより取り崩すまでは資産に計上する(この通達において,この一時払保険料を「買増年金積立保険料」という。)
 年金受取人が被保険者である場合には,契約者配当の受け取りに関し法人税の課税関係は生じない。

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4.資産計上した保険料等の取り崩し

(1) 年金支払開始日前に被保険者死亡の場合

 資産に計上した支払保険料の額および契約者配当等(積立配当に付される利子を含む。)の全額を取り崩して損金の額に算入する。
 なお,死亡給付金の受取人が法人である場合は,支払いを受ける死亡給付金の額および契約者配当等の額を法人の益金の額に算入することとなる。その場合,資産に計上した支払保険料・契約者配当等の取り崩しによる損金計上の時期と死亡給付金等の益金計上の時期は,同一事業年度とすることが相当とされる。

(2) 年金受取人が被保険者である契約の年金支払開始日が到来した場合

 資産に計上した契約者配当等の額の全額を取り崩して損金の額に算入する。この契約形態では支払保険料は給与処理されており,法人に資産計上額はない。
 なお,この場合に積立配当等の受取人が従業員に移ったことをとらえて,法人から従業員へ経済的利益の供与があったとされることはない。

 

(3) 法人が年金の支払を受ける場合

<1> 契約年金および増加年金の支払を受ける場合

 次の算式で得られる額に相当する年金積立保険料の額を取り崩して損金の額に算入する。

 
 

2 年金支払総額の計算は,個人年金の種類に応じて次のようになる。
 ・確定年金の場合
   保証期間中に支払われる契約年金と増加年金の合計額。
 ・保証期間付終身年金の場合
   保証期間と余命年数の期間とのいずれか長い期間中に支払われる契約年金と増加年金の合計額。
   余命年数は,年金支払開始日における所得税法施行令の別表「余命年数表」による。
   ただし,保証期間中に被保険者が死亡したとき以後は,保証期間中に支払われる契約年金と増加年金の合計額となる。
 ・有期年金の場合
   生存を前提とした保証期間中に支払われる契約年金と増加年金の合計額。

 なお,保証期間付終身年金で被保険者の余命年数により取崩額を算定している契約で被保険者が死亡した場合には,次の額を死亡の日の属する事業年度の損金の額に算入する。
 ・保証期間経過後に死亡の場合…取崩残額の全額
 ・保証期間中に死亡の場合

(注) 保証期間付終身年金の場合,保証期間中に被保険者が死亡したときは残りの保証期間中年金が支払われる。以後の取崩額は保証期間により算定することになるが,すでに取り崩した額については,余命年数によっていたため取崩額が過小になっている。上記の処理はその過小部分について一時に損金の額に算入する機会を与えているものといえる。

<2> 年金支払開始日後の契約者配当により買い増した年金(買増年金)の支払を受ける場合

 1年分の買増年金ごとに次の算式により計算した額の買増年金積立保険料を取り崩す。

 なお,保証期間付終身年金で,保証期間および余命年数の期間のいずれをも超過した後においては,買増年金積立保険料の全額を取り崩して損金の額に算入する。

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(4) 法人が年金の一時支払を受ける場合

 一時支払によりその保険契約が消滅するか否かに応じて処理が異なる。

<1> 消滅するもの(確定年金を一時金で受け取る場合)

 年金積立保険料と買増年金積立保険料の取崩残額の全額を取り崩して損金の額に算入する。

<2> 消滅しないもの(保証期間付終身年金の残存保証期間分を一時金で受け取る場合)

 残りの保証期間内に年金の支払を受けることとした場合に取り崩すこととなる年金積立保険料と買増年金積立保険料の額を取り崩して損金の額に算入する。
 残存額については,保証期間経過後に年金の支払を受ける日の属する事業年度において,  上記(3)により損金の額に算入する。
 なお,年金の一時支払を受けた後に被保険者が死亡した場合は,その死亡の日の属する事業年度に,取崩残額の全額を取り崩して損金の額に算入する。

(注) 法人が年金の支払を受ける場合の従来の実務上の処理は,
<1> 年金の支払を受けた場合,同額の資産計上した保険料等を取り崩す。
<2> <1>の処理を続けていくと,そのうち資産計上額はなくなるので,その後は年金の支払を受けたつど,その額を雑収入として益金の額に算入する。
 これによると,結果的に資産計上額のあるうちは差益が発生しない点が問題とされ,受取年金額に対する費用部分を厳密に計算して,平準的な差益の計上を求めているといえる。

(5) 解約および契約者変更の場合

 資産に計上した支払保険料および契約者配当等の額の全額を取り崩して,その事業年度の損金の額に算入する。

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5.名義変更の場合の取り扱い

 年金支払開始日前に被保険者である役員または使用人が退職したこと等に伴い,契約者および年金受取人を法人から被保険者に変更した場合には,解約返戻金相当額(契約者配当等を含む。)の退職給与または賞与の支払があったとして取り扱われる。
 年金受取人の変更がない場合,つまり変更前から年金受取人が被保険者である場合は,それまでに法人が支払った保険料については給与課税が行われているので,契約者変更に際して経済的利益の供与があったとされない。解約返戻金相当額の退職給与または賞与の支払いがあったとして取り扱われるのは,契約者の変更とともに年金受取人の変更があった場合に限られる。

参考:概略図(保証期間付終身年金・定額型の場合)

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各契約形態における税務処理

 

 理解を容易にするために,保険料の処理は個人年金保険料のみを取り上げた。特約保険料については,法人税基本通達9−3−6の2の規定が準用される。

 

1.経営者保険(退職金保険)型による税務上の取り扱い

(1) 契約の形態

・契約者     =法人
・被保険者    =従業員(役員または使用人)
・年金受取人   =法人
・死亡給付金受取人=法人

 

(2) 保険料払い込み時の取り扱い

<1> 法人の経理処理

 法人が負担した保険料は全額資産に計上され,損金にはならない。

借       方 貸       方
保険料積立金 ×××
現金または預金 ×××

<2> 被保険者の税務上の取り扱い

 課税関係は生じない。

 

(3) 配当金の取り扱い

 <1> 法人の経理処理

 その通知を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入する。

借       方 貸       方
配当金積立金 ×××
雑 収 入 ×××

 年金支払開始日後に支払われる配当金を買増年金の一時払保険料に充当した場合。

借       方 貸       方
買増年金積立保険料 ×××
雑 収 入 ×××

 <2> 被保険者の税務上の取り扱い

 課税関係は生じない。

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(4) 年金受け取り時の取り扱い

 <1> 年金受け入れと資産計上した保険料等(保険料積立金および配当積立金)の処理

借       方 貸       方
現金または預金 ×××
年金積立保険料 ×××
雑 収 入 ×××

(注)1 「現金または預金」は受け入れた年金の額(契約年金+増加年金+配当金)
2 「年金積立保険料」は年金支払開始日までに資産に計上された保険料積立金と配当金積立金の合計額のうち,受取年金額に対応する取り崩し額。

 買増年金を一緒に受け取る場合

借       方 貸       方
現金又は預金 ×××
年金積立保険料 ×××
買増年金積立保険料 ×××
雑 収 入 ×××

(注)1 「現金または預金」は受け入れた年金の額(契約年金+増加年金+買増年金)
2 「買増年金積立保険料」は所定の計算による取り崩し額。

 <2> 法人が受け取った年金を退職年金として被保険者に支払った場合

 退職年金として被保険者に支払った事業年度の損金の額に算入できる。

借       方 貸       方
退 職 年 金 ×××
現金または預金 ×××

 <3> 年金を受け取った被保険者の取り扱い

 受け取った年金に所得税が課税される。

 

(5) 年金支払開始日前に被保険者が死亡した(解約した)場合

 支払を受けた死亡給付金(解約返戻金)および配当金等の額を益金の額に算入し,それまでに資産に計上している支払保険料および配当金等の全額を取り崩す。

借       方 貸       方
現金又は預金 ×××
保険料積立金 ×××
配当金積立金 ×××
雑 収 入 ×××
  (注) 取り崩し額が受入額より大きい場合は,借方に「雑損」が計上される。

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(6) 年金支払開始日以前に契約の名義を法人から被保険者に変更した場合

 <1> 契約形態の変更

・契約者     =法人  → 従業員(被保険者)
・被保険者    =従業員 → 従業員
・年金受取人   =法人  → 従業員(被保険者)
・死亡給付金受取人=法人  → 被保険者の遺族

 <2> 法人の経理処理

 保険契約の権利を退職金または賞与として被保険者に譲渡したことになるので,資産に計上している保険料積立金および配当積立金の全額を取り崩す。
 この場合の権利の評価額は,解約返戻金等(配当金等を含む。)となる(所基通36−37)。

借       方 貸       方
退職金(または賞与) ×××
年金積立保険料 ×××
配当金積立金 ×××
雑 収 入 ×××
  (注) 取り崩し額が評価額より大きい場合は,借方に「雑損」が計上される。

 <3> 被保険者の税務上の取り扱い

 法人から契約の権利を退職金または賞与として受け取った場合には,退職所得または給与  として所得税が課税される。その後,受け取る年金は雑所得として課税される。

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2.福祉厚生保険型(その1)による税務上の取り扱い

(1) 契約の形態

・契約者     =法人
・被保険者    =従業員(役員または使用人)
・年金受取人   =従業員(同上)
・死亡給付金受取人=従業員(同上)の遺族

 

(2) 保険料払い込み時の取り扱い

 <1> 法人の経理処理

 法人が従業員のために支出した保険料は,従業員に対する給与とみなされ,原則として損金の額に算入される。
 ただし,被保険者が役員の場合には他に支給される役員報酬と合算されて過大報酬とみなされれば,過大部分は損金不算入の適用を受けることがあるので注意を要する(法法34)。

借       方 貸       方
給   与
×××
現金又は預金
×××

 <2> 被保険者の税務上の取り扱い

   給与として所得税が課税される。したがって,生命保険料控除の適用が受けられる。

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(3) 配当金の取り扱い

 <1> 法人の経理処理

 原則として通知を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入する。

借       方 貸       方
配当金積立金
×××
雑 収 入
×××

 ただし,法人と被保険者との契約(労働協約など)により,法人が配当の支払請求をせずに年金支払開始日まで積み立てられる(年金支払開始日に増加年金の責任準備金に充当される。つまり,確実に年金受取人である被保険者が受け取ることになる。)場合には,益金の額に算入しないことができる。

 <2> 被保険者の税務上の取り扱い

   課税は生じない。

 

(4) 被保険者が退職時の経理処理

●退職時にまだ年金支払開始日が到来していない場合
 原則として退職時に契約者を法人から被保険者に変更する。

 <1> 法人の経理処理

 契約者変更により法人は配当金等を受け取る権利がなくなるので,資産計上された配当金積立金がある場合には,その全額を取り崩し損金の額に算入する。

借       方 貸       方
雑   損
×××
配当金積立金
×××

 <2> 被保険者の税務上の取り扱い

   課税されない。

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(5) 年金の受け取り

 ●退職前に年金支払開始日が到来する場合

 <1> 法人の経理処理

 年金支払開始日が到来したことにより,法人は配当金等を受け取る権利がなくなるので,資産計上された配当金積立金がある場合には,その全額を取り崩し損金の額に算入する。

借       方 貸       方
雑   損
×××
配当金積立金
×××

 <2> 被保険者の税務上の取り扱い

   受け取った年金は雑所得として課税される。

 

(6) 死亡給付金の受け取り

 <1> 法人の経理処理

 死亡給付金(配当金を含む。)は被保険者の遺族に直接支払われるので,法人は資産計上された配当金積立金がある場合には,その全額を取り崩して損金の額に算入する。

借       方 貸       方
雑   損
×××
配当金積立金
×××

 <2> 受取人の税務上の取り扱い

 被保険者の遺族が受け取る死亡給付金は,相続税が課税される。法定相続人の数1人につき500万円の非課税財産の規定がある(相法12<1>五)。

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(7) 年金支払開始日前に解約した場合

 年金支払開始日前に契約を解約した場合,約款ではその解約返戻金(配当金を含む。)は契約者である法人に支払われる。

(注) 福祉厚生保険型の契約は,支払保険料が給与処理されるので,保険料の実質負担者は被保険者である従業員であり,契約者は法人であっても実態は個人契約と同様である。ところが,契約を解約したり解約返戻金を受ける権利は約款上,契約者である法人にあるため,一方的な解約は問題となるところである。

 <1> 法人の経理処理

 解約返戻金等は益金の額に算入し(問題のあるところだが…),資産計上された配当金積立金がある場合には全額を損金の額に算入する。

借       方 貸       方
現金または預金
×××
配当金積立金
×××
雑 収 入 ×××

 <2> 被保険者の税務上の取り扱い

   課税関係は生じない。

(注) 従業員の退職等により解約するというのであれば,むしろ契約者を法人から従業員に変更する方法がいいだろう。その場合,法人は資産計上された配当金積立金があれば,全額を取り崩して損金の額に算入する。

借       方 貸       方
雑   損
×××
配当金積立金
×××

 名義変更の時点では,従業員に課税関係は生じない。これ以降に従業員が契約を解約すれば,解約返戻金は一時所得の対象となる。

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3.福祉厚生保険型(その2)による税務上の取り扱い

(1) 契約の形態

・契約者     =法人
・被保険者    =従業員(役員または使用人)
・年金受取人   =法人
・死亡給付金受取人=従業員(同上)の遺族

 

(2) 保険料払い込み時の取り扱い

 <1> 法人の経理処理

 普遍的加入の要件を満たしている場合,支払保険料の10%は福利厚生費として期間の経過に応じて損金の額に算入,残りの90%は資産に計上される。

借       方 貸       方
保険料積立金
×××
福利厚生費 ×××
現金又は預金
×××

 役員等特定の従業員のみ加入の場合は,支払保険料の10%は給与扱いとなる。

借       方 貸       方
保険料積立金
×××
給与・報酬 ×××
現金又は預金
×××

 ただし,被保険者が役員の場合には他に支給される役員報酬と合算されて過大報酬とみなされれば,過大部分は損金不算入の適用を受けることがあるので注意を要する(法法34)。

 <2> 被保険者の税務上の取り扱い

 普遍的加入の場合は課税関係は生じない。
 役員等特定の従業員のみ加入の場合は,給与として所得税が課される。

 

(3) 死亡給付金の受け取り

 <1> 法人の経理処理

 死亡給付金(配当金を含む。)は被保険者の遺族に直接支払われるので,資産計上された保険料積立金と配当金積立金は,その全額を取り崩して損金の額に算入する。

借       方 貸       方
雑   損
×××
保険料積立金
×××
配当金積立金 ×××

 <2> 受取人の税務上の取り扱い

   被保険者の遺族が受け取る死亡給付金は,相続税が課税される。法定相続人の数1人につき500万円の非課税財産の規定がある(相法12<1>五)。

(4) その他の取り扱いは,1.経営者保険(退職金保険)型に準じて取り扱う。

参照:法人契約の個人年金に係る法人税の取扱い一覧表


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