Top契約形態別>法人契約>適格退職年金制度

適格退職年金制度

適格退職年金制度とは ■適格要件とは ■適格退職年金契約の承認手続き ■適格退職年金契約の承認の取り消し 
適格退職年金契約に係る掛金等の取り扱い ■従業員掛金の取り扱い ■適格退職年金契約に基づく給付金の取り扱い 
遺族に対する給付金  ■在職中の給付金 ■契約者配当金の取り扱い ■適格退職年金積立金に対する特別法人税

1.適格退職年金制度とは……

 平成13年6月の確定給付企業年金法および確定拠出年金法の成立により,適格退職年金は平成14年4月以降10年間で他の年金制度へ移行することとなり,新規の適格退職年金は認められない。

 企業の退職金制度を,企業年金契約として生命保険会社や信託会社等が受託して実施する制度である。企業の制度に合わせ保険会社等が企業と個別に協議して契約,協定内容を定めることになっている。そしてその協議内容に基づいて運営していくために,あらかじめ将来必要となる給付額を見積もり,その費用を保険料等として,保険会社等に払い込み,保険会社等ではその保険料積立金等を管理運用すると同時に,実際に退職年金や退職一時金の受給権者が発生する都度,その積立金の中から所定の給付を行うものである。
 したがって,保険契約に例をとれば,<1>契約者……企業,<2>被保険者……従業員,<3>受取人……従業員(またはその遺族)となっており,保険料負担者は原則として企業であるが,従業員も拠出することができることになっている。
 このような企業年金契約のなかで法人税法施行令第159条各号で定める適格要件を充足して,国税庁長官の承認を受けたものを適格退職年金契約という。

▲ページ上部へ

 

2.適格要件とは……

 (1) 目的

 退職年金(一部は退職年金に代えて退職一時金を支給することを含む。)の支給のみを目的としたものであること。

 (2) 契約の当事者

 事業主が受託会社と年金契約を締結し,その使用人を年金受取人として掛金等を拠出し,受託会社が退職年金の支給を約したものであること。

 (3) 役員等の除外

 退職年金契約を締結している法人の役員(使用人兼務役員を除く。),個人事業主若しくはこれと生計を一にしている親族は制度に加入させないものであること。

(注) 使用人兼務役員は,昭和49年度の税制改正により適格退職年金契約上受益者となる使用人となり得ることになったが,兼務役員も本来は役員であること等の事情もあって,これは加入が強制されたものではない(加入させない契約についても不当差別の禁止等の適格要件に反するものではない。)と解されている。なお,使用人兼務役員を加入させることとする場合には,退職年金に関する契約書において加入させる旨を定める必要がある(既契約については契約の変更手続きを要する。)。

 (4) 予定利率変更の取扱い

 予定利率は,再計算の時以外は変更しない(ただし,企業年金の規制緩和措置により予定利率の弾力化がはかられたため,例外措置が認められている。)。

 (5) 適正な年金数理

 掛金等の額及び給付の額が,次の基準に合致した適正な年金数理に基づいて算定されたものであること。
イ.予定利率は年0.9%以上であること(法規附則5<4>)
ロ.予定死亡率,予定昇給率又は予定脱退率はその時の現況に応じて合理的に計算されていること

 (6) 通常掛金の形態

 通常掛金は,定額又は給与に一定率を乗ずる方法その他これに類する方法により算出することがあらかじめ定められていること。

 (7) 過去勤務債務等の償却

 過去勤務債務等に係る掛金は,払込方法および償却期間について次のとおり取り扱う。

 <1> 払込方法が定額の場合…1年当たり,PSL総額の35%以下であること。
 <2> 払込方法が給与の一定率の場合…  〃      〃
 <3> 払込方法がPSL現在額の一定率の場合…各年とも1年当たりの償却額はPSL現在額の50%以下となるものに限る。

 これらのいずれによるかは,あらかじめ規定されていなくてはならない。
 そして,定めたものは以下の場合以外は変更できない。

 再計算を行うとき
 新たに予定脱退率又は予定昇給率を使用するとき
 給付の増額,受給資格の緩和又は給付の種類を追加するとき。
 その他積立方法の変更に合理的な理由があると認められたとき。

 (8) 超過留保額の処理

 5年以内の一定期間ごとに行う財政見直し(一般的に「再計算」と呼んでいる。)の際に発生した超過留保額は,その全額を掛金等に充当するか事業主に返還するものであること。

 (9) 積立金等の事業主への返還禁止

 給付に充てるため積み立てられている額(要留保額)は,<1>厚生年金基金へ移行するため契約の全部又は一部を解除する場合,<2>他の適格退職年金契約の受益者等となったため契約の全部又は一部を解除する場合,<3>受益者等が特定退職金共済契約の被共済者となったため,従来の適格退職年金の全部又は一部を解除し,その保険料積立金を特定退職金共済の掛金として直ちに払い込む場合,<4>受託会社間の引受割合の変更があった場合,のほかは事業主に返還しないものであること。
 なお,この場合に事業主に返還された金額は,いずれも厚生年金基金,他の適格退職年金契約及び引受割合の増加した受託会社に直ちに払い込むことを要するので,結果的には事業主に帰属するものはないことになる。

 (10) 解約金の従業員帰属

 適格退職年金契約の全部又は一部を解除した場合,要留保額は(9)に該当する場合を除き受益者等に帰属するものであること。

 (11) 給付減額の原則禁止

 給付減額を行わないと掛金の払い込みが困難になると見込まれること,その他相当の事由がある場合を除き,給付の減額を行ってはならないこと。

 (12) 差別取り扱いの禁止

 掛金等の額又は給付の額その他受給要件について,特定の者に不当な差別的取り扱いをしないものであること。

 (13) 資産運用の制限

 適格退職年金契約の締結により,事業主が受託会社から有利な貸付等の利益を受けないこと。また年金財産の運用について事業主が個別に指示を行わないものであること。

 (14) 制度の継続性

 適格退職年金契約が相当期間継続するものであること。

▲ページ上部へ

 

3.適格退職年金契約の承認手続き

 適格退職年金の承認は,国税庁長官が行う。適格の承認の申請は,契約ごとにその契約の幹事を引き受けた生命保険会社等が行うので,事業主は自ら行う必要はない。
 生命保険会社等は,適格の承認を受けようとするときは,<1>承認申請書に,<2>契約書の写し,<3>その他参考となるべき書類を添付して国税庁長官に提出する。
 承認申請の書式は,国税庁で定められているのでこれに記入し,退職給与規程などの参考書類を添付すればよい。国税庁長官は前述の要件のすべてを満たしている契約について,適格の承認を行い,その旨を生命保険会社等に書面で通知する。
 あらかじめ適格退職年金の要件を満たしていることについて,国税庁長官の認定を受けた定型的約款による場合は,届け出により自動的に承認があったものとみなされる。
 契約事項のうち,掛金の額,給付の額およびその他適格要件に関する事項を変更しようとするときは,国税庁長官の承認が必要である。この変更承認申請書の様式も国税庁で定められている。提出先,提出者,記載事項,承認の通知などの手続きについては,適格の承認の場合と同じ。

▲ページ上部へ

 

4.適格退職年金契約の承認の取り消し

 適格退職年金契約について,次に掲げるいずれかの事実があると認めるときは,国税庁長官はその承認を取り消すことができることになっている(法令161)

(1) その契約のうち,給付の額又は掛金等の額その他上記2の(1)から(14)に掲げる事項について,承認を受けないで変更したこと。

(2) その契約のうち,上記2に定める事項のいずれかに反する事実があること。
 すなわち,契約そのものは要件を充たしているが,実行行為が加入者一人についてでも契約どおりに行われていない事実があった場合である。

 なお,適格退職年金契約の取り消しは,退職年金契約そのものまでも否認するものではないから,取り消された後の契約について,税法上の適格要素を充足しない退職年金契約(以下「非適格退職年金契約」という。)として存続させることは可能である。
 その場合,適格退職年金ではなくなるので,事業主負担の掛金等は従業員の給与の増加分として課税される。また,給付金に対しては,一般の雑所得ないし一時所得として課税され,適格年金に比べて不利な取り扱いを受けることになる。

▲ページ上部へ

 

〈適格退職年金契約に係る掛金等の取り扱い〉

1.事業主掛金の取り扱い

 事業主が適格退職年金契約に基づき,受託会社に支払った通常の掛金及び過去勤務債務等の掛金は,事業主の所得の計算上損金又は必要経費に算入される(法令135,所令64)。ただし,その法人の役員(使用人兼務役員を加入させることとしている契約における当該使用人兼務役員を除く。)や個人事業主を適格退職年金契約に加入させた場合には(当初の契約で加入させることは,法人税法施行令第159条第3号要件の違反で契約そのものが承認されないから,一般的には使用人から役員(使用人兼務役員を加入させることとしている契約における使用人兼務役員を除く。)に昇格したような場合がこれに該当することになろう。),これらの役員等について支払った掛金等は損金に算入されない。
 このように,適格退職年金契約の掛金は原則として全額損金に算入されることになるが,適正な年金数理に基づく金額の範囲内であることはいうまでもない。(従業員への給与所得としての課税はない(所令64)。)

 なお,損金算入の時期は次による。

 (1) 通常の場合

 掛金は,現実に納付又は払い込みをしない場合には未払金として損金の額に算入することができない(法基通9-3-1)。
 なお,払込期日前に払い込まれても,期日前は損金とならない。

借       方 貸       方
福利厚生費
(適格年金掛金)
××××
現金又は預金 ××××

 従来,適格退職年金契約に基づく掛金は,金銭により払い込むものとされていた。しかし,平成12年4月1日より厚生年金基金への掛金の払い込みにつき,一定の要件の下で金銭に代えて上場株式によることができることとされたこと(厚生年金保険法139条<4>)等を踏まえて,平成12年度の税制改正において,過去勤務債務等の額に係るものに限り上場株式をもって行うことができるものとされた(所令64,法令159<2>)
 上場株式による掛金の払い込みを行った場合には,その時における株式の価額を損金の額に算入する旨の整理が行われた(所令64<2>,法令135)
 この改正は平成12年4月1日以後の掛金の払い込みから適用される(改正所令附則2,改正法令18)
 なお,信託の設定についての所得計算規定が新設され,上記の適格退職年金契約に係る信託の信託契約に基づき,株式の移転を行った場合には,その移転の時にその株式の譲渡が行われたものとして所得の金額を計算することとされた(所令185,法令136の5)
 これらの改正は平成12年4月1日以後の掛金の払い込みから適用される。
 なお,信託の設定についての所得計算規定についても平成12年4月1日以後に行う株式の移転について適用する(改正所令附則2,改正法令19)

 (2) 適格退職年金契約の承認前に支出した場合

 適格退職年金契約は,国税庁長官の承認を得てはじめて適格なものとなる。従って,承認申請又は制度施行の日から承認の日までに時期的なずれがあることは当然予想されるところである。この間の取り扱いについては,次のようになる。
 事業主が退職年金契約の申請書を出していれば,その支出の日の属する事業年度において,損金の額(又は必要経費)に算入することができる。

 承認取り消しの場合の取扱いは次のようになる。

<1> 取り消しのあった日以後の掛金は,損金算入が認められなくなる。ただし,取消日以前の掛金の損金算入を遡及して否認することはない。

<2> 非適格退職年金契約となった契約をそのまま継続する場合
 取消日以後支払われる掛金は,受取人が従業員であれば従業員の給与として損金算入される。この場合,従業員はこれを生命保険料控除の適用対象とできる。

▲ページ上部へ

 

2.従業員掛金の取り扱い

 (1) 従業員負担掛金の容認

 適格退職年金契約の要件上では,適格退職年金契約に係る掛金はすべて事業主が支払うことになっているので(法令159二),契約上では従業員が掛金の支払人となることはないが,実質的に従業員負担掛金があることを前提とした規定があり(法法84<2>一イ,二イ,法令159八,所法31,同35等),従業員負担掛金は容認されている。実務上はこの従業員負担掛金は,事業主が拠出した掛金の一部を従業員が分担するという形式をとることになる。具体的には,事業主は掛金の額をいったん損金に計上し,従業員が分担した額を雑益等として益金に算入する形式をとることになる。なお,従業員負担分は全体の以下であることが必要である。

(注) 適格退職年金の自主審査要領の中に,上記規定の補足として,通常掛金等の加入者負担割合は通常掛金等の額の50%相当額を超えることはできないとなっているので,結局拠出割合は通常掛金の50%ということになる。

 〈経理処理例〉

  • 適格退職年金掛金500,000円(うち従業員負担分150,000円)を支払った場合

借       方 貸       方
福利厚生費
(適格年金掛金)
500,000円
仮  受  金 150,000円
現金又は預金 500,000円
雑  収  入 150,000円
  (注) 従業員負担分の掛金は,給与から天引きした時点で仮受金として計上してあったとする。

 (2) 生命保険料控除の適用

 適格退職年金契約は,生命保険料控除の対象となる「生命保険契約等」に該当し,従業員の負担した掛金は生命保険料控除の対象となる(所法76)。従って,従業員が他の生命保険契約により支払った保険料と合算して生命保険料控除額の計算を行うことになる。

▲ページ上部へ

 

〈適格退職年金契約に基づく給付金の取り扱い〉

1.退職による給付金

 (1) 年金の場合

 年金については,公的年金等に係る雑所得として課税される(所法35)。

 (2) 一時金の場合

 一時金については,従業員の退職に基因して支払われるものについては退職手当等とみなされ退職所得として課税される(所法31三)。それ以外のものについては一時所得として課税される。年金の受給資格者に対して,年金に代えて支給される一時金(選択一時金)のうち,その年金受給開始以前に支払われるものは「退職所得」となり,同日後に支払われるものは原則として,一時所得となる。ただし,この場合,同日後に支払われるものであっても,将来の年金給付の総額に代えて支払われるものは,次の区分に応じ,それぞれ次に掲げる年分の退職手当等として差し支えないことになっている(所基通31-1)

<1> 退職の時以後その退職に基因する退職手当等をすでに受けている場合……最初に支払われた退職手当等の支給期の属する年分

<2> <1>以外の場合……選択一時金の支給期の属する年分

 
〈設例〉

  平成13年に退職手当金1,000万円を受給,3年を経過して支払いが開始される退職年金を,その年金に代えて一時金で請求した場合,どのような形で課税されるか。
 年金に代えて支払われる一時金のうち,年金受給開始以前に支払われるもの及び同日後に支払われる一時金で将来の年金給付の総額に代えて支払われるものは退職手当金等とされ,その受給者に対し,既にその退職に基因して別に退職手当金等が支払われている場合には,はじめに支払われている退職手当金等の支給期の属する年分の退職手当金等として取り扱われる。
 つまり平成16年に年金に代えて一時金の受領をしたときは,平成13年に支給された退職金に合算され,課税額の再計算が行われる。

 
  B時点の選択一時金は,A時点の1,000万円と合算してA時点で退職所得を計算し直すことになる。

 (3) 所得とされる金額

 適格退職年金契約による給付で,公的年金等に係る雑所得又は退職所得とされる金額は,従業員負担掛金の有無によって異なる。

<1> 従業員負担掛金が無い場合……給付金額

<2> 従業員負担掛金がある場合……給付金額から従業員負担掛金に相当する金額を控除した金額(所法31三,同<3>35三)

 従業員負担掛金は,課税済所得から拠出されるものであるから,所得の計算上給付額から控除されるのは当然のことである。ただ,拠出時に生命保険料控除を受けている場合は,拠 出時の所得控除と合わせて二重控除の問題があるが,生命保険料控除の場合は最高限度が定められていて,生命保険料を多額に払い込んだ場合は必ずしも実質的に生命保険料控除の対象となっていない場合もあり,従業員負担掛金はすべて給付金額から控除されることとなっている。

(注) 控除される従業員負担掛金に相当する金額の計算

   退職手当等とみなされる一時金の場合
 実際に負担した掛金の累計額(所法31二)。
 公的年金等に係る雑所得とみなされる退職年金の場合
 
   分母の「年金支給総額」とは,確定年金の場合の支給総累計をいい,「年金支給総額の見込額」とは,終身年金など確定年金でない場合の支給予定総額である(所令82の3)。

▲ページ上部へ

 

2.遺族に対する給付金

 適格退職年金契約に基づいて支給される遺族年金および遺族一時金は,死亡した者の勤務に基づいて支給されるものであり,所得税法では非課税であるが,相続税法では相続又は遺贈により取得したものとみなされ,相続税が課税される(所法9<1>十五,相法3)。

 (1) 遺族年金

(イ) 従業員が在職中に死亡した場合
 遺族年金は所得税(住民税含む。)は課税されないが,その支給期間等に応じて評価される金額(遺族年金を受け取る権利の評価額)が,退職手当金として相続税が課税される(相法3<1>二)。この場合の評価額は,掛金を事業主が負担した部分,従業員が負担した部分の区別をせず,遺族の受けるべき年金の全額について評価される。ただし,退職手当金とされるので,500万円に法定相続人の数を乗じた金額が非課税財産(退職金控除)となる(相法12<1>六)

(ロ) 年金受給中の者が死亡した場合
 保証期間付年金を受給中の者が,保証期間の満了前に死亡したため,その遺族が継続して年金を受けることになる場合は,残余支給期間に応じて評価される金額(継続して年金を受け取る権利の評価額)が,契約に基づかない定期金に関する権利として相続税が課税される(相基通3-29)。なお,この場合は退職手当金ではないので,非課税財産(退職金控除)の適用はない。

 (2) 遺族一時金

 死亡退職した従業員の遺族に支給される一時金は,所得税(住民税含む。)は課税されないが,事業主負担分,従業員負担分の区別なく,全額が退職手当金として相続税が課税される(相法3<1>二)
 ただし,500万円に法定相続人の数を乗じた金額が非課税財産(退職金控除)となる(相法12<1>六)
 つぎに,保証期間付年金を受給中の者が,保証期間の満了前に死亡したため,その遺族が継続して受ける残余期間の年金の代わりに,打切一時金の支給を受けた場合は,その一時金の額に相続税が課税される(相基通3-29)。
 この場合の一時金は退職手当金ではないので,非課税財産(退職金控除)の適用はない。

▲ページ上部へ

 

3.在職中の給付金

 (1) 年金制度廃止による分配金

 適格退職年金制度の廃止により,適格退職年金契約が解除された場合には,要留保額は受益者に帰属することになっているので(法令159九)分配されることになるが,この分配金は原則として一時所得として取り扱われる。

 (2) 適格退職年金契約の承認が取り消された場合

 適格退職年金契約について,適格承認の取り消しを受けると非適格退職年金契約となる。この場合,承認の取り消し前に既に受給権の確定していた者に支給される年金は公的年金等に係る雑所得となり問題はないが,その取り消しを受けた時以後に開始される給付で,それが年金給付であれば一般の「雑所得」に,一時金給付であれば「一時所得」となる(所令76,同82の2)。

 (3) 脱退一時金

 従業員拠出の制度で,在職中の加入者が年金制度から脱退した場合,本人拠出の元利合計相当額までの一時金給付をすることがあるが,自己負担掛金相当額はすでに課税済であるから,これを控除した金額(利息相当額)が一時所得とみなされて取り扱われる。

▲ページ上部へ

 

4.契約者配当金の取り扱い

 適格退職年金契約により生命保険会社から支払いをうける契約者配当金は企業の益金に算入されることになっている。
 益金に算入する時期は,保険料払い込み案内等により通知を受けた日の属する事業年度である(法基通9−3−8)
 益金に算入される金額は,保険会社から保険料払い込み案内で事業主に通知される金額によることになっている。
 なお企業における経理上の処理は,配当金が翌期の保険料に充当される場合でも,差し引き損金算入額を保険料として損金計上するのではなく,次のように,保険料全額を損金にたて,配当金を益金にたてることになっている。

 〔保険料の損金算入〕

 〔契約者配当金の益金算入〕

▲ページ上部へ

 

〈適格退職年金積立金に対する特別法人税〉

 適格退職年金業務を行う内外法人(注)(生命保険会社,信託銀行等)に対しては各事業年度の所得に対する法人税のほか,退職年金積立金に対して1%の特別法人税が課税される(法法8,同83,同87)
 これは,事業主が使用人のために生命保険の掛金を損金として支払った場合には,使用人の給与所得となり課税対象とされるのが原則であるが,適格退職年金契約の場合,掛金の拠出時には各人の年金支給額が確定できないので,実際に年金等として給付を受けたときに課税することとし,それまでの課税繰延べの利益を総体的に法人税として徴収することとしているものである。
 なお,この他に特別法人税の17.3%の住民税法人税割が課税されることになるから,退職年金積立金に対する課税率は次のようになる。

(注) 退職年金等積立金に対する法人税(特別法人税)は,従来適格退職年金業務を営む内国法人に課されていたが,平成12年度の税制改正で同様な業務を営む外国法人に対しても同様に課税される規定が新設された。(ただし,内国法人の場合と同様,租税特別措置法第68条の4により,平成20年3月31日までの間に開始する各事業年度については課税が停止される)
 課税標準,退職積立金の額の計算,退職積立金に対する法人税の税率,申告および納付は内国法人の場合に準じて規定されている。

 

●特別法人税の経理処理法

 特別法人税は,契約上,運用収益から控除するか(実務面ではこの方法による)追加払いをするかであるが,結局事業主が負担することになる。この場合,特別法人税として別途負担した場合は,適格退職年金契約の掛金等と同様,損金に算入されるから,法人税額から控除することはできない。

参照:適格退職年金に対する課税例
参照:適格退職年金の受託概況

▲ページ上部へ