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非適格企業年金制度

役員年金 ■役職加算年金 ■第2〜第3種団体年金  ■その他  ■特定退職金共済制度 
法人税非課税団体における従業員退職年金(一時金)制度  ■従業員拠出制年金制度  ■税法上の取り扱い 
掛金を給与(又は報酬)として処理する場合(全額従業員負担の場合を含む。)  ■掛金を資産計上する場合  
特定退職金共済制度として利用した場合

 非適格企業年金とは,本来,保険商品としては,適格企業年金と何ら変わるところがないものであるが,たまたま適格要件を満たさないか,あるいは適格要件を満たす必要のない場合に販売される企業年金を指すものであって,税制上の優遇は受けることはできないが,逆に適格要件にしばられることもなく自由に設計することができるので,その活用方法は案外広範囲にわたっている。
 その典型的なものには次のようなものがある。

 A.適格要件を一部満たさないもの

1.役員年金
2.役職加算年金
3.団体運営基準の第2〜第3種団体における年金制度
4.その他

 B.適格企業年金である必要のないもの

5.特定退職金共済制度の資産運用の1つとして利用する場合
6.非営利団体(法人税非課税団体)における,従業員退職年金(一時金)制度
7.従業員拠出制年金制度

 等が考えられる。

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1.役員年金

 適格企業年金では役員(使用人兼務役員を除く。)の加入が禁止されているので,除外された役員を対象として,企業年金契約を結ぶことができる。この場合この部分については適格企業年金としての税制上の優遇は受けられないが,従業員等の適格企業年金が契約されておれば,その付随団体(いわゆる親子団体ともいう。)として,加入者が1人でも非適格企業年金契約を締結することができる。

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2.役職加算年金

 役員年金と同趣旨で,退職金の役職加算等,適格要件を満たさない制度を実施したい場合利用できる。

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3.第2〜第3種団体年金

 たとえば,同業組合や協同組合の組合員を対象として,退職年金制度を実施したい場合等,適格企業年金としては承認されないので,非適格企業年金が利用される。

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4.その他

 適格企業年金として適格要件を満たすことができなくて,あるいは国税庁長官の承認を受けていなかったため,やむを得ず非適格企業年金として企業年金を契約する場合もある。ただし,当初「非適格企業年金」として発足してから,あとでその理由が解消しても,これを後日適格企業年金に変更することはできないので,十分注意を要する。

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5.特定退職金共済制度

 特定退職金共済制度とは,所得税法施行令第73条に定める次の要件を満たした退職金制度である。

(1) 商工会議所又は,退職金共済事業を主たる目的とする公益法人で,税務署長の承認を受けた団体が行う退職金共済制度であること。

(2) 加入事業主のみが,その掛金を負担するものであること。

(3) 被共済者が,他の特定退職金共済制度に加入していないこと。

(4) 被共済者の中に,加入事業主及びこれと生計を一にする親族又は加入事業主である法人の役員を含まないこと。

(5) 掛金として払い込まれたものは加入事業主に返還しないこと。

(6) 掛金の月額は,被共済者1人につき3万円以下であること。

(7) 過去勤務期間は10年を限度とし,かつ,5年以内に払い込みを完了し,かつ月額は2万2,000円以下であるものであること。

(8) 被共済者のうち特定の者について不当に差別的な取り扱いをしないこと。  等

 これに加入したときには,掛金は全額損金として処理でき,かつ従業員の給与とはならない(従って従業員に所得税も課せられない。)。また,退職後,給付を年金で受け取ったときには公的年金等に係る雑所得とみなされ,一時金で受け取ったときには退職所得とみなされる等,適格企業年金とほとんど同じ取り扱いを受けることができる。この特定退職金共済制度を生命保険会社が受託するときには,非適格企業年金を利用する場合が大部分である。

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6.法人税非課税団体における従業員退職年金(一時金)制度

 法人税の課税されない非営利事業における従業員退職年金制度においては,適格企業年金としても税法上の優遇を受けるわけではなく,かえって特別法人税だけ余計に課税され,しかも適格要件を守る必要があるので,適格企業年金制度を採用する必要はなく,非適格企業年金で実施した方が条件もゆるやかである。上記特定退職金共済制度もこの特殊なケースであるということもできよう。

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7.従業員拠出制年金制度

 従業員拠出制の退職年金制度の場合には,拠出部分については法人税は関係がないので,必ずしも適格企業年金とする必要がない。そこで,運営のやり易い非適格企業年金で実施されることが多い。この場合には,もちろん生命保険料控除を受けることができるし,また,個人年金保険料控除を受けるための必要条件

(1) 年金の受取人が,本人又は配偶者であること。

(2) 保険料の払い込みが10年以上にわたっていること。

(3) 年金の給付が60歳以降10年以上の期間,または終身であること。

 等の要件を満たし,かつ協定書にも

(1) 給付は,年金,死亡及び高度障害による給付に限ること。

(2) 年金の支払回数は年1回以上で,受取人が生存している期間定期に行い,かつ,年金の一部を一括して支払う定めのないこと。

(3) 配当の分配は,年金の支払開始日前には行わないか,払込保険料の範囲内であること。

 等の定めがあるものについては,個人年金保険料控除を受けることができる。

 いずれの場合にも,既述の適格要件の一部を満たしていないので,適格企業年金としては承認されないので,この面からの税制上の優遇を受けることはできない。それでも,他の制度(例えば個人(年金)保険契約あるいは一般の貯蓄等)に比し有利と考えられる場合及びもともと法人税が課税されず,この面の優遇を受ける必要のない場合等に利用されている。

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〈税法上の取り扱い〉

 非適格企業年金の場合には,厚生年金基金保険(調整年金)や適格企業年金の場合のように税法上特別の規定はないが,通常,個人保険や個人年金と同様,一般の生命保険契約の取り扱いが適用されるものと考えられる(ただし,後述の特定退職金共済制度に利用する場合等には,これらの場合の規定が適用される。)。従って税法上の取り扱いは,個人保険の法人を契約者とした場合の取り扱いとほぼ同じであると思われるので,この部分と重複するものが少なくないが,その主要点について説明したい。
 税法上は大別して,保険料を<1>給与(又は報酬)とする場合<2>資産計上する場合<3>特定退職金共済制度として利用する場合,の3つに分けられる。
 概略を1表にまとめると,次表の通りである。

非適格企業年金制度の課税関係一覧表

(注) 所得税法9条1項3号ならびに所得税基本通達9−2による。

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A 掛金を給与(又は報酬)として処理する場合(全額従業員負担の場合を含む。)

1.掛金等の税法上の取り扱い

イ.事業主負担の掛金の取り扱い
 事業主がその従業員のために負担した非適格企業年金契約の掛金で,事業主の所得の計算上損金または必要経費に算入されるものは,その従業員の給与所得の収入金額となる(所令65)
 従って,信託銀行や退職金共済団体と締結した契約の場合は適用されないが,生命保険会社と締結した契約の場合は,事業主が負担した掛金であっても生命保険料控除が適用される(所基通76−3)

ロ.従業員負担の掛金の取り扱い
 従業員が自己のために支払った非適格企業年金契約の掛金は,その契約が生命保険会社と締結されたものであるときは,生命保険料控除が適用される(所法76)。所定の条件を満たしたときには個人年金保険料控除を受けることもできる。

 

2.給付関係

 (1) 従業員等に支払われる年金・一時金

 (イ) 年金の場合は,次の算式で計算した金額が雑所得として課税される(所令183<1>)。

雑所得=年金年額−必要経費

「必要経費」とは,年金を得るために払い込まれた保険料のことで,次の式によって求められる(所令183<1>)

(ロ) 一時金の場合は,その一時金の額から保険料合計額を差し引いた残額が,一時所得として課税される。

(ハ) 年金と一時金の両方が支払われる場合は,年金については(イ),一時金については(ロ)の取り扱いになるが,保険料合計額は次の算式で計算する。

 年金に対する保険料合計額

 一時金に対する保険料合計額

保険料合計額−上記の年金に対する保険料合計額

 

 (2) 遺族に支払われる年金・一時金

 非適格企業年金契約の給付金の受取人が年金の支払開始日前に死亡したため,生命保険契約からその遺族に年金が支払われる場合は支給期間等に応じて評価される金額(年金受給権),一時金の場合はその金額が,生命保険金として相続税の課税対象となる(相法3<1>一)
 この場合,年金受給権・一時金を問わず500万円に法定相続人の数を乗じた金額が非課税財産(保険金の非課税金額)となる(相法12<1>五)。
 一方,年金受給中の者が死亡したため,残余支給期間のあるものについてその遺族に支払われる継続年金(年金に代えて支払われる一時金を含む。)には,上述と同じようにその受給権に相続税が課税される。ただし,非課税財産(保険金の非課税金額)の適用はない(相法3<1>五)。
 また,遺族が受ける毎年の年金については,それが死亡した者の勤務にもとづいて支給されるもの以外は(1)の(イ)の算式で計算した金額が雑所得として課税され,10%の税率で所得税の源泉徴収が行われる。

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B 掛金を資産計上する場合

1.契約の形式

保険契約者………………………法人
被保険者…………………………従業員
年金又は一時金受取人…………法人

 

2.掛金の負担及び処理

 受取人が法人であるので,掛金の負担者が従業員であることは考えられない。また,受取人が従業員ではないので,給与(又は報酬)とする必要もない(従業員にとっては,契約者・受取人共法人であるので,みなし給与として課税されることもなく,また,生命保険料控除の対象にもならない。税務上は無関係である。)

 

3.法人の経理と税務処理

 法人の負担した掛金は,実際に給付が発生するまで,資産に計上されることとなる。配当金は,その通知を受けた事業年度の益金の額に算入する。

 

4.給付を受け取った場合の処理

 年金を受け取ったときは,所定の算式により求めた額を資産計上した保険料等からとりくずし,差額は雑収入として益金の額に算入する。もし,受取額が資産計上額を超過した場合には,とりくずしは資産計上額に止め,超過額は雑収入として益金に算入する。

 

5.退職従業員に退職年金(又は一時金)を支払ったとき

 規程に基づき従業員に退職年金又は退職一時金を支払ったときには,同額を損金処理することができる。
 年金で支払うときには,支払額をその都度損金に計上することとなり,原資相当額を一度に損金に計上することはできない。

 

6.退職従業員が年金を受け取ったとき

 年金は,在職中の勤務に基づき使用者であったものから支給されるものであるから,公的年金等に係る雑所得として所得税が課せられる。(所法35)

 

7.退職従業員が一時金を受け取ったとき

 退職金として受け取ったとき,退職所得として所得税の対象となる。

 

8.従業員の遺族が年金を受け取るとき

 年金を受け取る権利について相続税法第24条等に定める評価基準により評価して相続税が課せられる。なお,年金受給権の取得者が相続人のときは法定相続人1人につき500万円の非課税規定が適用される。つぎに年金を受け取ったときには,この年金は死亡した者の勤務に基づいて支給されるものであるから,所得税法第9条第1項3号のロにより,所得税は課せられない。

 

9.従業員の遺族が死亡退職金として一時金を受け取ったとき

 相続税が課せられる。なお,法定相続人1人につき500万円までは非課税となる(相法12<1>六)。

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C 特定退職金共済制度として利用した場合

 適格年金とほぼ同様の取り扱いがなされるが,特別法人税は課せられない。

1.掛金の取り扱い

 個人事業主又は法人が使用人のために掛金を支出したときには,支出した年分の損金となる(所令64,法令135)。また,この掛金は,従業員の給与ともならない。
 ただし,この掛金が非適格(例えば,事業主と生計を一にする家族である場合,月掛金が3万円を超えている場合,重複して加入していた場合等)であったときには,従業員の給与とみなされ,従業員に所得税が課せられる。

 

2.給付の取り扱い

 退職した従業員に対し,特定退職金共済制度より一時金が支給されたときには退職所得として(所令72),また,年金が支給されるときには公的年金等に係る雑所得として(所令82の2)課税される。
 ただし,特定退職金共済制度が承認を取り消された以降に支給される給付,従業員が一部掛金を負担したもの,二以上の特定退職金共済制度に加入していたもの,掛金額が限度を超えていたもの等であるときには,一時金なら一時所得として,年金のときは雑所得として課税されることになる。

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