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変額個人年金

変額個人年金保険とは ■税務上の取扱い ■投資信託との比較 ■法人契約の変額個人年金保険

 近年,資産形成商品として変額個人年金保険が脚光を浴び,各社から相次いで発売されている。そこで,変額個人年金保険の税務上の取り扱いについて整理しておこう。

1.変額個人年金保険とは

 変額個人年金保険は,払い込んだ保険料が特別勘定(ファンド)で運用され,その運用実績に応じて将来受け取る年金額や解約返戻金,死亡保険金などが変動する個人年金保険。
 一番の特長は,特別勘定で運用されるため,運用の結果次第で積立金が増減し,解約返戻金,将来の年金の原資,死亡保険金が増減することである。高い収益性を期待できるが,一方で,株価や為替の変動などの投資リスクは契約者が負うことになる。
 保険期間は,契約から年金支払開始までの運用(積立・据置)期間と年金支払期間の2つに分かれ,運用期間中に被保険者が死亡した場合には,死亡給付金(一時金)が支払われる。死亡給付金も運用実績により増減するが,多くの商品は死亡日の運用実績が不振であっても払込保険料相当額などの基本給付金額を最低保証している。
 年金支払期間中は,年金原資は特別勘定による資産運用は行わない定額型年金方式と,特別勘定で運用する変動型年金方式がある。

変額個人年金保険(定額型年金方式)の仕組み図(一時払契約の場合)

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2.税務上の取扱い

 契約時から年金受取時,そして死亡するまでの税務上の取り扱いの概要をまとめると次のようになる。

 

(1) 契約(保険料払込)時

 支払った保険料は,生命保険料控除の対象となる。一時払の場合は,契約した年のみが控除対象となる。個人年金保険料控除の対象とはならない。
 生命保険料控除の対象となる契約は,保険金受取人が本人か配偶者またはその他の親族(6親等以内の血族および3親等以内の姻族)であることが必要。

(2) 運用(積立)期間中

<1> 解約払戻金

 解約した場合の払戻金の税金は,保険料の払込方法と契約時に選択した年金の種類により異なる。
 一時払で確定年金を選択した場合は,契約後5年以内の解約は金融類似商品課税が適用され,解約差益(解約返戻金と一時払保険料の差額)に対して20%(所得税15%,住民税5%)源泉分離課税が行われる。5年超の解約は,一時所得課税となる。
 一時払以外の場合および一時払でも終身年金を選択している場合は,契約後の期間に関係なく一時所得課税となる。

【設例】

イ.一時払保険料1,000万円を支払って変額個人年金保険(年金種類は確定年金)に加入し,加入後4年目に全部解約した。解約払戻金は1,500万円だった。

これにより,課税関係は終了する。

ロ.一時払保険料1,000万円を支払って変額個人年金保険に加入し,加入後9年目に全部解約した。解約払戻金は1,500万円だった。この年は,ほかに一時所得となるものはなかったものとする。

 

  225万円がその年の他の所得と合算されて,納付税額が計算される。

 <2> 死亡給付金

契約の形態により,税金の取り扱いが下記のように異なる。

※ 死亡給付金の受取人が法定相続人である場合は,他の死亡保険金との合計額について「500万円×法定相続人の数」の非課税財産額がある。
 上表では,契約者が夫の場合を例示しているが,妻を契約者として夫と妻を入れ替えても同様の取り扱いとなる。

 <3> 分配金

 運用(積立)期間中の運用益の課税は,引き出し時まで繰り延べられる。特別勘定(ファンド)に移転(スイッチング)などの際に収益が発生していても,年金受取開始時または解約などの引き出し時まで課税が繰り延べられる。

 

(3) 年金受取開始時

 契約者と年金受取人が異なる場合,年金の受取開始時に年金受給権の評価額に対して贈与税が課税される。なお,その後に毎年受け取る年金は雑所得となり,所得税と住民税が課税される。
 年金受給権の評価額は,年金種類によって相続税法第24条(定期金に関する評価)により計算する。
 現在販売されている変額個人年金保険における年金種類は,確定年金,終身年金,保証期間付終身年金,保証期間付有期年金,保証期間付夫婦年金,定額型一時金付終身年金となっている。

<1> 確定年金

 被保険者の生死にかかわらず一定期間,年金を支払う。年金支払期間中に被保険者が死亡した場合は,遺族に年金を支払う(一時金で受け取ることもできる。)。
 残存期間に応じて,その残存期間に受けるべき年金の総額に次の割合を乗じて計算した金額が権利の評価額となる(相法24<1>一)。

<2> 終身年金

 被保険者が生存している限り,一生涯年金を支払う。
 年金受取開始時の被保険者の年齢に応じて,1年間に受けるべき金額に次の倍数を乗じて計算した金額が評価額となる(相法24<1>三)

<3> 有期年金

 被保険者が生存している限り,一定の年金支給期間中,年金を支払う。年金支給期間中に被保険者が死亡した場合は,年金支払開始日の年金基金からすでに支払った年金の合計額と差し引いて,残高がある場合はそれを一時金で支払い,契約は消滅する。
 年金支給期間を残存期間とする確定年金として計算した金額と,終身年金として計算した金額のいずれか低い金額が評価額となる(相法24<3>)

 

<4> 保証期間付終身年金

 被保険者が生存している限り,一生涯年金を支払う。保証期間中に被保険者が死亡した場合は,残りの保証期間中,年金を支払う。
 保証期間を確定年金期間として計算した金額と,終身年金として計算した金額のいずれか高い金額が評価額となる(相法24<4>)

 

<5> 保証期間付有期年金

 被保険者が生存している限り,一定の年金支給期間中,年金を支払う。保証期間中に被保険者が死亡した場合は,残りの保証期間中,年金を支払う。
 有期年金としての評価した金額と保証期間を残存期間とする確定年金として計算した金額のいずれか高い金額が評価額となる。

 

<6> 保証期間付夫婦年金

 被保険者または被保険者の配偶者のいずれかが生存している限り,年金を支払う。保証期間中に被保険者および被保険者の配偶者のいずれもが死亡した場合は,保証期間中,年金を支払うか,保証期間の残存期間に対応する年金の現価を一時金として支払う。
 税法の規定はないが,被保険者の終身年金として計算した金額,配偶者の終身年金として計算した金額,保証期間を確定年金期間として計算した金額のいずれか高い金額が評価額となるものと考えられる。

【設例】

・契約者(保険料負担者)=夫,被保険者=年金受取人=妻,65歳年金開始,年金額100万円

イ.10年確定年金の場合

(年金額)(確定年金期間)(割合)

年金受給権の評価額=100万円 × 10年 × 60% = 600万円

ロ.10年保証期間付終身年金の場合

・10年確定年金としての評価額 600万円

・終身年金としての評価額

(年金額)(倍数)

年金受給権の評価額=100万円×2=200万円

確定年金としての評価額のほうが高いので,600万円が年金受給権の評価額となる。

 

(4) 年金受取期間中

<1> 年金を受け取った場合

毎年受け取る年金は,雑所得として,所得税・住民税が課税される。

年金受取見込み総額は,年金種類により異なる。

1.確定年金…年金額×支給期間

2.終身年金…年金額×余命年数

3.保証期間付終身年金…年金額×(保証期間年数か余命年数のいずれか長い年数)

4.保証期間付有期年金…年金額×(保証期間年数と余命年数のいずれか長い年数と,支給期間とのいずれか短い年数)

5.保証期間付夫婦年金…年金額×(被保険者の余命年数,配偶者の余命年数,保証期間年数のいずれか長い年数)

【設例】

イ.年金種類:10年確定年金,年金額:200万円,払込保険料:1,200万円

200万円−200万円×=80万円…雑所得の金額

80万円が他の所得と合算されて,納付税額が計算される。

ロ.年金種類:10年保証期間付終身年金,年金額:200万円,払込保険料:1,200万円,60歳年金開始,女性

60歳女性の余命年数は23年。保証期間10年<余命年数23年であるから,
200万円×23年=4,600万円…年金の受取見込み総額
200万円−200万円×=148万円…雑所得の金額

 上記の雑所得の金額が25万円以上の場合には,保険会社は年金を支払う際に雑所得の金額の10%を所得税として源泉徴収し,国に納付する。

●定額型一時金付終身年金の年金の必要経費算出方法

 ところで,変額個人年金には,被保険者の生存中は年金を受け取り,被保険者が死亡した場合に年金支払開始時の年金原資から受取年金累計額を差し引いた残額を死亡一時金として受け取れる定額型一時金付終身年金がある。これによって支払われる死亡一時金は,年金受取開始時の年金原資から支払われた年金総額を控除したものであり,年によって順次逓減していくものであるから,一時金の額を不変のものとすることを前提としている(所令183条第1項第3号に規定する年金のほか一時金が支払われるもの)計算式により定額型一時金付終身保険の必要経費を算出することはできない。
 定額型一時金付終身年金の雑所得の計算は,年金支払開始時において,次のA,Bのいずれか小さいものを必要経費とすることとなる。

A=

  B=

<2> 一時金を受け取った場合

 年金受取人が保証期間中(確定年金は年金支払期間中)に年金を一括して受け取った場合,受け取った一時金は,年金の種類によって,一時所得か雑所得となる(所基通35−3)
 確定年金の場合は,年金を一括して受け取ると契約が消滅するので,一時所得となる。
 保証期間付終身年金などの場合は,保証期間分の年金給付に代えて(残存保証期間の未払年金の現価を)一括して受け取ることができるが,保証期間後に被保険者が生存している場合には,年金が支払われる。したがって,雑所得となる。

<3> 変額個人年金保険を定期的に一部解約した場合(定時定額引き出し)

 解約期間を毎月,3か月,6か月または12か月ごとに設け,定期的かつ一定額ずつ一部解約した場合の解約時返戻金は,雑所得として所得税の課税対象となる。その場合の雑所得の計算は以下のとおり。

 雑所得の金額=一部解約返戻金額−必要経費

  (注) 1. 一部解約返戻金額は,早期解約することにより保険会社の定めた解約控除額を差し引いた金額。
    2.

 

<4> 年金受取期間中に年金受取人が死亡した場合

 被保険者と年金受取人が異なる契約で,年金受取期間中に年金受取人が死亡した場合,継続年金受取人が引き続き年金を受け取る。
 この場合,年金を受け取る権利が年金受取人から継続年金受取人に引き継がれることになる。
 例えば,契約者・年金受取人が夫,被保険者が妻という契約で,年金受取人である夫が亡くなり,妻が継続年金受取人となる場合には,年金受給権が相続税の課税対象となる。また,その後に妻が受け取る年金は雑所得となる。

<5> 保証期間中(確定年金は年金支払期間中)に被保険者が死亡した場合

 確定年金の年金支払期間中および保証期間付終身年金などの保証期間中に,被保険者が死亡した場合,年金受取人(年金受取人が被保険者と同一の場合は,被保険者の法定相続人)が残りの期間に対応する未払年金を一時金あるいは年金で受け取る。
 主な契約形態による課税関係を一覧にまとめてみると,次のようになる。

 <6> 定額型一時金付終身年金の年金受給権の取り扱い

 例えば,契約者(保険料負担者)・妻,被保険者・夫,年金受取人・妻という契約で,年金受取開始後に妻が死亡し,その年金受給権を夫が引き継いだ場合,その受給権は相続税の課税対象となるが,その評価方法は次のイ,ロのいずれか高い金額により行う。

イ.終身年金により評価した金額(相法24<1>三)

ロ.有期定期金により評価した金額(相法24<1>一)

保証期間中(確定年金は年金支払期間中)に被保険者が死亡した場合の課税関係

 

3.投資信託との比較

 変額個人年金保険の年金原資の運用は長期にわたるものあり,運用方法として投資信託の仕組みを利用している。その仕組みからすると,変額個人年金保険は投資信託と個人年金保険の特長を併せ持った商品といえる。ただし,直接,投資信託を購入するわけではないので,その点で違いがある。また,生命保険商品のひとつであり,保険税制が適用される点も大きく異なる。
 参考までに,投資信託との違いをまとめておく。

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4.法人契約の変額個人年金保険

 「法人契約の個人年金」を参照ください。

変額個人年金保険と投資信託との比較

 ハートフォード生命は,平成13年10月24日付で「変額個人年金保険に関する課税上の取扱いについて」の事前照会を行い,平成14年6月7日付で東京国税局課税総括課長名による文書回答を得ている。

変額個人年金保険に関する課税上の取扱い(平14)

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