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こども保険

1.こども保険の仕組み

(1)一般に,この保険は,こどもの学資金・結婚資金または独立資金の確保をはかることを目的としており,被保険者が小学校・中学校・高校および大学の入学適齢に達したときに所定の一 時金(祝金)を給付するほか,被保険者が満期まで生存したときに保険金を支払う仕組みとなっている。

(2)契約関係者

 

2.こども保険の税務

(1)生命保険料控除

 積立配当(満期時支払い指定の契約)の場合を除き,配当差し引き後の正味保険料が生命保険料控除の対象となる。上記積立配当の場合は表定保険料が生命保険料控除の対象となる。

(2)契約者(親など),被保険者(子供)がともに生存している場合の入学祝金・満期祝金入学祝金・満期祝金が支払われるつど,受取人である契約者(保険料負担者)の一時所得となる。従って,課税所得は次の算式により計算される。

   上記の一時所得の特別控除額は,50万円である。ただし,総収入金額から収入を得るために支出した金額を控除した残額が50万円に満たない場合には,その残額相当額で打ち切りとなる(所法34<3>)。

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<設 例>

 
  ・契約内容… 親の契約年齢 30歳
    こどもの 〃  0歳
年払保険料…10万円
    祝金… 小学校入学(6歳)20万円,中学校入学(12歳)30万円
     

高校入学(15歳)40万円,大学入学(18歳)50万円
満期(22歳)60万円

・小学校入学祝金を受け取ったときの課税所得の計算

課税所得={祝金20万円−(10万円×6回−0)−特別控除額}×

・中学校入学祝金を受け取ったときの課税所得の計算

課税所得={祝金30万円−(10万円×12回−20万円)−特別控除額}×

 
  (注)  “それまでに収入を得るために支出した金額に算入した保険料の合計額”欄に20万円と記入したのは,小学校入学祝金を得るために20万円の保険料を支出しているのでここにそれを記入した。従って,高校入学祝金受け取り時の計算ではこの欄に小学校入学時20万円と中学校入学時30万円の合計額50万円(=20万円+30万円)を記入することになる。

(3)被保険者(子供)が死亡した場合

 一般に,こども保険は,被保険者(子供)の死亡時には死亡給付金(既払込保険料−既払済入学祝金)を契約者(親など)へ支払うとしている契約内容のものが多いが,この死亡給付金は契約者の一時所得となる(所基通34―1(4))

 
  課税所得=

{(死亡給付金)+積立配当金

−収入を得るために支出した金額(既払込保険料合計−既受取済入学祝金合計)

−特別控除額(50万円)}×

       

(4)契約者(親など)が死亡した場合

<1> 死亡時の権利価額

 まず,契約者の死亡に伴い,通常の場合,約款にもとづく権利の承継者であるこどもに対し,こども保険の権利の価額が相続財産として課税対象となる(相基通3−36)
 この場合の権利の価額は原則として,解約返戻金の額で評価する。なお,平成15年度改正で廃止された旧相続税法第26条(生命保険契約に関する権利の評価)により,平成18年3月31日まで評価した場合は認められる。

<2> 入学・満期祝金を受け取ったとき

 相続によって取得したとみなされた以後は,当該新契約者は(親が負担した保険料も)自ら負担したものと同様に取り扱われることになっている(相基通3−35)から,契約者(親など)の死亡後に受け取る入学・満期祝金の課税は,一時所得になると考えられる。
 一時所得の計算は親などが祝金を取得した場合と同様である。なお,保険料払込免除となった保険料部分は収入を得るために支出した金額とはならないから留意のこと。

(5)契約者(親など)が高度障害となった場合

<1> 入学・満期祝金を受け取ったとき

 契約者が受け取る入学・満期祝金は税法でいうところの高度障害にもとづく給付金には該当しないから所得税法施行令第30条(非課税とされる保険金,損害賠償金等)の適用はできない。従 って,契約者の一時所得となると考えられる。

<2> 保険料の払い込み免除

 一般契約において,保険料払い込み時の課税がなされていないのと同様に,現実には払い込み免除段階での課税は行われていない。また,生命保険料控除の対象にもなっていない(実際に払い込まれた保険料でないということから)
 祝金を受け取ったときの免除保険料の取り扱いについては,払込免除による保険料は支出した金額にならない。

 
 

 生保各社にみるこども保険の仕組みは,このところ昔日のそれに比べ非常に多様化して幅広いニーズにこたえ得るようになってきている。それだけに,払込保険料の取り扱いにはじまり,各種の給付金,満期時受取金の税務上の取り扱いについては戸惑う場面もふえているように思う。
 下記の設例2題によりその取り扱い方につき理解を深めていただこう。

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<説例1>

こども保険の場合の生命保険契約に関する権利の評価(旧相続税法第26条による)
 被相続人甲は,生前その子乙を被保険者とするこども保険に加入し,死亡時までの払込保険料180万円の全額を負担していました。この保険金の合計額は300万円で,被保険者が6歳に達した時に10%(30万円),12歳に達した時に15%(45万円),15歳に達した時に20%(60万円),18歳に達した時に25%(75万円)がそれぞれ入学祝金として支払われ,被保険者が22歳になった時に30%(90万円)が満期祝金として支払われることになっていますが,このうち甲の死亡時までに支払われた保険金は,75万円です。なお,この生命保険契約においては,契約者が死亡した場合は,以後の保険料を免除するとともに被保険者がその契約者の権利義務のすべてを承継することになっています。甲の死亡時の課税関係はどのようになりますか。
 

…この生命保険契約においては,保険金の支払条件である被保険者の6歳,12歳,15歳,18歳,22歳までの生存がそれぞれ保険事故に該当することになりますが,この生命保険契約においては,契約者が死亡した場合には,被保険者が契約者の権利義務のすべてを承継することとされていますから,その契約者がその保険契約に係る保険料の全部又は一部を負担しているときは,その死亡の時以後に保険事故の発生により被保険者等に対して支払われる保険金に係る生命保険契約に関する権利のうちその契約者が負担した保険料に対応する部分については,被保険者が相続又は遺贈により取得したものとみなされます。
 従って,問の場合には,乙は次により計算した生命保険契約に関する権利を甲から相続又は遺贈により取得したものとみなされます。

<1> 払込保険料の合計金額

<2> 保険金額

300万円−75万円=225万円

<3> 生命保険契約に関する権利の価額

<4> 相続又は遺贈により取得したものとみなされる部分の金額

 
 

<説例2>

養育年金付こども保険の契約者が死亡した場合の課税関係
 最近のこども保険のうちに,被保険者(子)が一定の年齢に達するごとに保険金が支払われるほか,契約期間中に契約者が死亡した場合には,以後の保険料を免除するとともに,満期に達するまで養育年金を支払うという内容のものがあります。なお,この生命保険契約では,契約者が死亡した場合には,被保険者(子)が契約者の権利義務のすべてを承継することとされています。
 この生命保険契約において契約者が死亡した場合の課税関係はどのようになりますか。
 

…いわゆる養育年金付こども保険は,実質的にみると子(被保険者)と親(契約者兼被保険者)の2人の被保険者が存在する生命保険であり,連生保険といわれるものに該当します。
 従って,養育年金付こども保険について契約者(親)が死亡した場合には,契約者の死亡を保険事故とする養育年金の支払いに関しては保険事故が発生していますが,その死亡の時以後における被保険者(子)の一定年齢までの生存を保険事故とする保険金の支払に関しては,保険事故は発生していないということになります。
 そこで,この場合の課税関係については,次のように,保険事故が発生している養育年金の受給権に係る課税関係と保険事故が発生していない保険金に係る生命保険契約に関する権利の課税関係とに分かれます。

<1> 養育年金の受給権に係る課税関係

 契約者の死亡により被保険者等が取得する養育年金の受給権についての課税関係は,次のとおりです。

イ 契約者が負担した保険料に対応する部分の養育年金の受給権

相続又は遺贈により取得したものとみなされる保険金に該当します。

ロ 契約者以外の人(その受給権を取得した被保険者等を除きます。)が負担した保険料に対応する部分の養育年金の受給権

贈与により取得したものとみなされる保険金に該当します。

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<2> 生命保険契約に関する権利に係る課税関係

 この生命保険契約においては,契約者が死亡した場合には,被保険者がその契約者の権利義務のすべてを承継することとされています。そこで,死亡した契約者がその保険契約に係る保険料の全部又は一部を負担しているときは,その死亡の時以後に保険事故の発生により被保険者等に対して支払われる保険金に係る生命保険契約に関する権利(原則として,解約返戻金の額による。ただし,平成18年3月31日までは旧相法26による評価も認められる)のうちその契約者が負担した保険料に対応する部分については,被保険者が相続又は遺贈により取得したものとみなされます。

 
 

〈事例〉

 養育年金付こども保険の契約者(親=保険料負担者)が死亡し,被保険者である子A (親の死亡時12歳)がこの契約を引き継いだ。
 契約の内容は下記のとおりである。

(問1) この契約の相続時の価額は?

(問2) また,15歳で入学祝金を受け取ったが,その年度の養育年金の受給と合わせて所得税の計算はどうなるか。

〔契約内容〕

(イ) 養育年金 年額180万円。親死亡時より支給開始となり,こども22歳となるまで10年間支給される。ただし,途中でこども死亡の場合はその時点で終了するものとする。

(ロ) 基本保険金 500万円

〈内訳〉6歳時40万円(受給済),12歳時60万円(受給済),15歳時100万円,18歳時150万円,満期時150万円

(ハ) 契約者の死亡時までの払込保険料の合計380万円

 

 

〔計算〕

(問1) 相続時の計算

(1)養育年金の権利の評価額

 (イ) 有期定期金としての評価額

180万円×10年=1,800万円
1,800万円×法定割合  =1,080万円

 (ロ) 終身定期金としての評価額

180万円×12歳の法定倍数(11倍)=1,980万円
(イ)(ロ)のうちいずれか低い金額1,080万円……<1>

(2)残存保険金にかかる生命保険契約の権利の価額(旧相法26による場合)

 (イ) 保険金に対応する保険料の計算

 (ロ) 評価額の計算

(3)こども保険の相続財産価額

<1>+<2>=1,139.3万円

(問2) その年度の所得の計算額

 所得の計算においては,養育年金分(雑所得)と祝金部分(一時所得)に対応する既払保険料の按分計算が必要になる。この計算方法について明文化された規定はないが,実務上は次の方法が考えられる。

(1)養育年金分(雑所得)

(2)祝金分(一時所得)

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