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簡易保険

受け取り年金(雑所得)とその課税所得の計算 ■継続年金の支払い開始時における課税関係 
年金開始前に契約者名義が変わった場合 ■年金支払い開始前の還付金と税法上の取り扱い 
年金の繰り上げ支払いと税法上の取り扱い ■終身年金保険付終身保険と税法上の取り扱い 
特別夫婦年金保険にかかる課税関係等

1.受け取り年金(雑所得)とその課税所得の計算

 相続税基本通達の一部改正(平成4年6月19日)により簡保の年金保険は「生命保険契約」に含まれることが明らかになり,民間の個人年金保険と同様に取り扱われることになった。ここでは,簡保の年金保険のもつ特性から生ずる税法上の取り扱いなどを中心に記述する。

 

(1) 簡保の年金保険のあらまし

 年金保険には,(逓増型,定額型,介護割増年金付)終身年金保険,夫婦年金保険と定期年金保険がある(他に財形終身年金保険もあるが,この章で解説する年金保険には含まない。)。
 終身年金保険は,契約後一定の期間保険料を払い込み,年金受取人が年金支払い開始年齢に達したときに,その日から年金受取人の生存中年金が支払われるという制度である。さらに,年金の支払いの開始があった後10年または15年の保証期間内は,年金受取人が死亡しても年金継続受取人に継続して年金が支払われるという仕組みになっている。また,夫婦年金保険は夫婦を加入対象とし,一方を年金受取人,配偶者を年金継続受取人とするもので,夫婦どちらかが生きている限り年金を受け取れる。
 一方,定期年金保険は契約後一定の期間保険料を払い込み,年金受取人が年金支払い開始年齢に達したときに,5年または10年,年金受取人の生存中に限り年額最低18万円から最高90万円の年金が支払われるという仕組みの商品である。

保険料分割払据置終身年金保険の仕組み図

 

(2) 終身年金保険の雑所得の金額算出までの計算手順

<1> 雑所得の金額は次の算式で計算される。

<2> 前述の<1>の算式にある「必要経費」は次のようにして計算する。

(注)1.必要経費割合は次のようにして求める。

=必要経費割合

必要経費割合は小数点以下2位まで算出し,3位以下を切り上げる(所令183<1>四)

2.簡易保険では,上述の必要経費割合を求めるために必要な「年金支払い総額の見込額」について,次表のような簡便算出表をつくっている。

●終身年金保険

※nは〔初年度基本年金額+積増年金Aの初年度基本年金額〕である。

 

●定期年金保険

<3> 保証期間付据置終身年金保険の雑所得の金額の算出(仮定による計算例)

 
 
〈契約例〉 ――別掲の仕組み図参照――
 
  • 40歳加入 60歳支払い開始
  • 初年度基本年金額 36万円
  • 月額保険料(男) 39,204円
  • 初年度積増年金A 6万円
  • 必要経費割合
  • 1年目の受取額  42万円(仮定)
  • 10年目  〃     63万円( 〃 )
  • 15年目  〃     78万円( 〃 )
 

=0.90

   

●1年目の雑所得の所得金額

●10年目の雑所得の所得金額

●15年目の雑所得の所得金額

  (注)

1.保証期間付据置終身年金保険の各年度の支払い年金額は「初年度の基本年金額プラス積増年金A」の3%複利による逓増年金プラス積増年金Bとなっている。
 従って,この各年度の逓増年金額を算出するため,簡易保険では次の複利表を使う。

 
   
2.保証期間付据置終身年金保険の必要経費割合算出のために次の年金終価率表を使う。
 

 

(3) 定期年金保険の雑所得の金額の算出(計算例)

 定期年金保険の配当金は,年金支払期間の満了時に支払われるので,満了の年は配当金の額を加算したものが雑所得の金額となる。

 
〈契約例〉
 
  • 男性・50歳加入 60歳支払い開始
  • 年金額 36万円
  • 必要経費割合
  • 10年定期年金保険
  • 月額保険料(男)27,648円
  • 15年目  〃     78万円( 〃 )
 

=0.92

●1年目〜9年目の雑所得の所得金額

●10年目の雑所得の所得金額

 28,800円+配当金……10年目の雑所得の金額

 

■介護割増年金付終身年金の介護割増年金の取り扱い

 簡易保険では,平成7年4月1日から「介護割増年金付終身年金保険」を発売している。この保険は,被保険者が特定要介護状態になった場合に,通常の終身年金に加えて介護割増年金を支払う仕組みになっている。
 この介護割増年金部分については所得税法施行令第30条に規定する「身体の傷害に基因して支払いを受ける保険金」に該当するため,非課税として取り扱われる。

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2.継続年金の支払い開始時における課税関係

 年金保険には保証期間付終身年金保険,夫婦年金保険と定期年金があるが,継続年金を支払う商品は終身年金保険と夫婦年金保険である。
 保証期間付終身年金保険では,保証期間内に年金受取人が死亡したときは,その残存期間中,年金継続受取人(相続人)に年金を支払う。したがって,A方式の有期定期金としての価額が権利価額となる。
 また,夫婦年金保険では,主たる被保険者が年金支払開始後に死亡した場合に,配偶者たる被保険者が生存しているときは,その者(年金継続受取人)が死亡するまで年金を支払う。したがって,この場合には,A方式とB方式により計算した金額のうち,いずれか高い方の価額が権利価額となる。

 
 
(注) 1.Aの方式は相続税法第24条第1項第1号(有期定期金)による。Bの方式は相続税法第24条第1項第3号(終身定期金)による。
 

2.年金終価率を使うわけは,終身年金の評価の場合,毎年受ける年金の額が異なるときは条文に規定する倍数と同じ年数の間に受給する合計年金額を求め,さらに所定の計算をするため。

 

3.簡保の終身年金保険(逓増型)は3%の複利となっているから,年金終価率の利率は3%。定額型の場合は残存保証期間の年数となる。

 

4.A方式とB方式により計算した金額のうち,いずれか高い方の価額が権利価額となるとする根拠は相続税法第24条第4項によっている。

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3.年金開始前に契約者名義が変わった場合

 年金開始前に契約者名義が変わった場合とは,年金の支払い(給付)事由が発生していない契約について権利の移転があった場合のことで,一般に<1>契約者(保険料負担者)の生存中に契約者名義が変更された場合,<2>契約者(保険料負担者)の死亡に伴い契約者名義が変更された場合――この2つが考えられる。

(1) 契約者の生存中に契約者名義が変更された場合

 保険料負担者である契約者の死亡を伴わない第3者への名義変更のときは,その後,この保険料負担者である契約者が生存すると,解約あるいは年金支払いが開始されるまで,贈与の課税は延期される(相法6<1>,同6<2>)
 たとえば,年金保険の保険料払込期間中に,夫が契約者(保険料負担者)であったその年金契約の契約者たる地位を,年金受取人である妻に承継した場合,その税法上の取り扱いは次のようになる。

イ)契約者の地位が夫から妻に承継された時点で,年金契約に関する権利は移転するが,課税関係は生じない(相法6<1>)

ロ)妻が年金支払い開始年齢に達したとき,妻は夫から,夫の負担した保険料に対応する部分の年金を受け取る権利を贈与されたものとみなされ,贈与税が課せられることになる(相法6<1>)

  (注)

 年金を受け取る権利の評価額の計算は相続税法第24条による。

 

(2) 契約者の死亡に伴い契約者名義が変更された場合

 保険料負担者である契約者の死亡に伴い第3者へ契約者名義が変更されたようなときは,新しく契約者となった者に対して,その年金保険の権利の評価額が保険料負担者の本来の相続財産として相続または遺贈される(相法3<1>四,相基通3−42)
 年金保険の権利を取得したときに,未だ年金の支払い事由が発生していない契約に関する権利の評価額は還付金額により行う。ただし、平成18年3月31日までは旧相続税法第26条(生命保険契約に関する権利の評価)により行うこともできる。
 なお,旧郵便年金法の規定により締結された郵便年金契約については,相続税法第25条により評価する。
 権利取得のときに,支払い事由が発生していない郵便年金契約に関する権利価額の評価法(相法25)
 支払い(給付)事由の発生していない郵便年金契約に関する権利価額の評価は,保険料の払い込み開始から権利取得時までの経過期間に応じて,そのときまでに払い込まれた保険料の合計額に次の割合を乗じて算出した金額が権利の価額となる。

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4.年金支払い開始前の還付金と税法上の取り扱い

 年金の支払い開始前に年金保険契約が消滅し,還付金が支払われた場合の税法上の取り扱いは,大要次のとおり。なお,還付金は保険契約者(その者がないときはその相続人)に支払われる。

〈還付金にかかる税金の計算式〉

 

●還付金に所得税(一時所得)がかかる場合

  (注) 1.一時所得は他の所得と合算し総合課税する場合,その1/2を合算すればよいこととなっている。
    2.上記一時所得には,所得税のほかに住民税が課せられる。
 

●還付金に相続税がかかる場合

(還付金)+(配当金)=相続税の課税価格

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5.年金の繰り上げ支払いと税法上の取り扱い

 終身年金保険,夫婦年金保険の年金受取人,年金継続受取人は,年金又は継続年金を受け取ることとなった後,保証期間の残りの期間の年金について,年金の繰り上げ支払いの請求ができる。年金の繰り上げ支払金については,だれが保険料を負担したかに関係なく,所得税・住民税が課せられることになるが,次のように所得の種類が変ってくるので留意しておく必要がある。

●繰り上げ年金の課税関係

繰り上げ年金の支払金は次のように計算される。

また,所得金額の計算上,控除される必要経費の額は次のとおり。

 

●雑所得扱いとなる繰り上げ年金の所得金額の計算

 

●一時所得扱いとなる繰り上げ年金の所得額の計算

(注) 一時所得金額は他の所得と合算し総合課税されるときは,その1/2を合算すればよいこととされている。

 

〈参考〉 年金の繰り上げ支払いの概要について

 終身年金保険,夫婦年金保険にあっては,年金支払い事由発生日以後保証期間内に限り,年金受取人(年金継続受取人が年金の支払いを受けるに至った後においては年金継続受取人)は,保証期間内に支払うべき将来の年金を一括して支払う繰り上げ支払いを請求することができる。
 繰り上げ支払いの対象とする年金には,繰り上げ支払いの請求の日までの配当金による積増年金も含む。
 なお,保証期間の満了後に年金受取人又は夫婦年金保険の年金継続受取人が健在のときは,年金の支払いを再開する。終身年金保険の年金継続受取人が繰り上げ支払いを受けた場合は契約は消滅する。

〈年金繰り上げ支払いの特例〉

 契約者(保険料負担者)である年金受取人が死亡し,年金継続受取人が継続年金を受け取る権利を取得した場合には相続税の課税対象になるが,継続年金を受け取る権利を取得した直後(継続年金としての最初の年金支払い期が到来する前)に年金の繰り上げ支払い(一時金=年金現価)を請求したときは,その繰り上げ支払金に所得税(一時所得)は課せられないことになっている(所基通9―18)

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6.終身年金保険付終身保険と税法上の取り扱い

 郵政省(現総務省郵政事業庁)は平成3年4月1日から,簡易保険に年金保険を組み合わせた生涯保障保険として「終身年金保険付終身保険」(販売名称:トータルプラン しあわせ)を創設,発売している。この保険は,生涯生活設計を意識した保障の充実を図るため,ひとつの商品で青壮年期には高い死亡保障,老年期には,生存保障(年金)と死亡保障(終身)が得られる仕組みとなっている。

終身年金保険付終身保険の仕組み図
〈60歳支払開始、2倍型、基準保険金額1,000万円の場合〉

 

● 契約者(保険料負担者)と年金受取人(被保険者)が異なる場合の年金支払開始時の課税関係

 年金支払開始時の課税関係は,保険部分と年金部分に分けて考えることになる。

(1) 保険部分…年金支払開始時には課税は生じない。保険金を受け取った時点で課税の対象となる。

(2) 年金部分…年金受取人は保険料負担者ではないので,年金受取人(被保険者)は保険料負担者(契約者)から年金を受け取る権利(年金受給権)を贈与により取得したものとみなされて,次の評価額が贈与税の課税対象となる(相法24<4>)

(720,000円+120,000円)×18.5990×=7,811,580…年金受給権の評価額

 

●年金受取人が年金を受け取ったときの必要経費の算出方法

 年金受取人が受け取る年金は,雑所得として所得税・住民税が課税される。この場合の必要経費は,払込保険料を年金部分と保険部分にあん分して算出する。

必要経費=(基本年金額+積増年金A)×必要経費割合

(注)必要経費割合=

年金の支払総額の見込額=(基本年金額×積増年金A)×年金終価率

必要経費割合=0.68

必要経費  (600,000円+120,000円)×0.68=489,600円

雑所得の金額 720,000円−489,600円=230,400円

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7.特別夫婦年金保険にかかる課税関係等

 簡易保険では,平成9年1月から「特別夫婦年金保険」を発売した(平成15年3月31日売止め)。この保険は,配偶者の一方が死亡後に年金の支払いを開始するもので,その概要は次のとおり。

(1) 夫婦のうちいずれか一方が保険契約者(主たる被保険者)となり,夫婦の他方が配偶者たる被保険者となる。

(2) 夫婦のうちいずれか一方が死亡した日から夫婦のうち生存している者に年金を支払う。ただし,年金支払開始年齢に達する日前に夫婦のいずれか一方が死亡した場合には,年金支払開始年齢に達した日から夫婦のうち生存している者に一定の期間(保証期間)中,年金を支払う。

(3) 保証期間内に年金受取人が死亡したときは,その死亡のときから保証期間の満了時まで,次の者に年金(継続年金)が支払われる。

<1> 主たる被保険者が死亡したとき

主たる被保険者の相続人

<2> 配偶者たる被保険者が死亡したとき

配偶者たる被保険者の相続人

特別夫婦年金保険の仕組み図

●相続税・贈与税の課税関係

 この特別夫婦年金保険に関する相続税・贈与税の課税関係は次のようになる。

・保険契約者(主たる被保険者)=A

・配偶者たる被保険者     =B

 Aが保険料の全額を負担しているものとする。

 

1.年金支払開始年齢に達する前にAが死亡した場合

 Aが年金支払開始年齢に達する前に死亡した場合には,BがAの契約者の地位を承継することになる。すなわち,BはAから生命保険契約に関する権利を“本来の相続財産”として取得するので,相続税の課税対象となる。
 なお,Bの相続税の課税価格の計算に当たっては,還付金の額(平成18年3月31日までは旧相続税法第26条による評価も可)により評価する。

  (注) Aが年金支払開始年齢に達する前にBが死亡した場合には,相続税または贈与税の課税 関係は生じない。

 

2.AおよびBが生存したままAが年金支払開始年齢に達した場合

 この保険では,夫婦の双方が生存している限り年金は支払われないので,相続税および贈与税の課税関係は生じない。

 

3.年金の給付が開始した場合

 この保険は,夫婦のいずれか一方が死亡した日(ただし,主たる被保険者が年金支払開始年齢に達する日前に配偶者たる被保険者が死亡した場合には「主たる被保険者が年金支払開始年齢に達した日」,主たる被保険者が生存していたとした場合に年金支払開始年齢に達することとなる日前に主たる被保険者が死亡した場合には「主たる被保険者が生存していたとした場合に年金支払開始年齢に達することとなる日」(以下,これらの日を「年金支払開始年齢に達する日」という。))から夫婦のうち生存している者に年金を支払うこととされている。したがって,年金の給付が開始されるケースとしては,次の(1)から(4)のケースが考えられる。

(1) 「年金支払開始年齢に達する日」の到来後にAが死亡した場合

 この場合,Bに対して年金の支払いが始まるが,Aが保険料の全額を負担していることから,Bは,生命保険金を相続により取得したものとみなされ,相続税の課税対象となる(相法3<1>一)。年金の方法により支払いを受ける生命保険契約に係る生命保険金の額は,相続税法第24条(定期金に関する権利の評価)の規定により計算した金額によることとされている(相基通24−3)。特別夫婦年金保険の場合,年金受取人となった者の生存中年金を給付し,かつ,その者が死亡したときにはその相続人が継続して一定期間年金を受け取ることができることとなるので,保険金の額は,相続税法第24条第4項の規定により評価する。なお,相続税法第12条第1項第5号の規定に基づいて計算した一定の金額は非課税となる。

(2) Aが死亡した後に「年金支払開始年齢に達する日」が到来した場合

 相続税または贈与税の課税は生じない。なお,Aが死亡した時に,生命保険契約に関する権利がBの相続税の課税対象とされる。

(3) 「年金支払開始年齢に達する日」の到来後にBが死亡した場合

 Aに年金の支払いが開始するが,Aが保険料の全額を負担していたことから,相続税または贈与税の課税は生じない。

(4) Bが死亡した後に「年金支払開始年齢に達する日」が到来した場合

 Aに年金の支払いが開始するが,Aが保険料の全額を負担していたことから,相続税または贈与税の課税は生じない。

 

4.年金受給者が保証期間内に死亡した場合

 年金受給者が保証期間内に死亡した場合には,その年金受給者の相続人が保証期間が終了するまでの間,継続年金を受け取ることができる。この場合の相続税の課税関係は次のとおり。

(1) 上記3の(1)または(2)のケースでBが死亡した場合

 この場合,Bの相続人に継続年金が支払われることとなるが,Aの支払った保険料はBが支払ったものとみなされ(相法3<2>),Bの相続人が保証期間付定期金に関する権利を相続により取得したものとみなされ(相法3<1>五),Bの相続人の相続税の課税対象とされる。なお,この保証期間付定期金に関する権利は相続税法第24条第1項第1号の規定により評価する。

(2) 上記3の(3)または(4)のケースでAが死亡した場合

 この場合,Aの相続人に継続年金が支払われることとなるが,Aが保険料を負担していたことから,Aの相続人がこの保証期間付定期金に関する権利を相続により取得したものとみなされ(相法3<1>五),Aの相続人の相続税の課税対象とされる。なお,この保証期間付定期金に関する権利は相続税法第24条第1項第1号の規定により評価する。

 

●個人年金保険契約等に係る生命保険料控除の適用関係

 保険料の払込期間が年金支払開始日前に10年以上あり,保険料の払込者又はその配偶者が生存している場合はいずれかを年金の受取人とし,終身(保証期間付)にわたって年金が支払われるものであることから,所得税法76条4項に規定する個人年金保険契約等に該当し,個人年金保険契約等に係る生命保険料控除が受けられる。
 なお,この特別夫婦年金保険の仕組みから,適用について次のような点で疑問を持つ向きもあるようだ。

<1> 年金の受取人が生存している期間にわたって定期に支払われるものである(所令212二)というためには,従来の個人年金保険にあるように,あらかじめ約款等で定められた一定の日をもって年金の支払事由とすべきであり,死亡といういつ発生するかわからない偶然の事実をもって年金の支払開始事由としていいのか。

<2> 年金を給付する定めのあるものが個人年金保険契約等とされる(所法76<4>)という税法の規定からすると,例えば夫婦が年金支払開始年齢到達後に同時死亡するような場合は,年金を給付する定めのあるものとはいえず,まさに一時金の支払いを目的とする保険そのものであるといえるのではないか。

 

 これらの点については,次のように考えられている。

(1) 年金の支払事由を死亡としていることについて

<1> 所得税法76条4項では,「年金の支払いは,当該年金の受取人の年齢が60歳に達した日以後の日で当該契約で定める日以後」とされ,年金の支払事由から死亡を除く規定になっていない。

<2> 一定の年齢に到達したことをもって年金の支払開始日とすることと,配偶者の死亡をもって年金の支払開始日とすることは,結果的にどちらも偶然の事実をもって年金支払開始日とするものであり,それが生存という事実と死亡という事実の違いに過ぎないものと考えられる。

(注) 満期保険金(生存保険)については,継続的行為から生じた所得以外の一時的,偶発的に発生した所得であるところから,生命保険契約等に基づく一時金として一時所得と取り扱われている(所基通34−1(4))

<3> 年金支払開始年齢に到達しかつ当該夫婦のうちの一人の死亡を年金の支払事由とするものであることから,必ずしも死亡の事実のみをもって年金の支払事由としてはいない。

(2) 夫婦が同時死亡するケースについて

<1> 事例の場合は保証期間中年金継続受取人(相続人)が年金を引き続き受け取ることになっている(ただし,年金の一括繰上支払を請求することができる。)。

<2> 既存の夫婦年金保険は,例えば,年金支払開始年齢後一年も経たないうちに年金受取人が死亡し,相続人が残期間の年金を一括して受け取る場合であっても,個人年金保険契約等に該当するものとして取り扱われているが,この特別夫婦年金保険についてもこの既存の夫婦年金保険と異なる取り扱いをする特段の理由もない。

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