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■契約者=法人/受取人=従業員の契約(福祉厚生保険型)の仕組み ■支払保険料について ■受取配当金について |
1.契約者=法人/受取人=従業員の契約(福祉厚生保険型)の仕組み
一般に事業保険扱いの契約のうち福祉厚生保険等がこれに該当する。
(1) 養老保険(法基通9―3―4(2))・特約付加の場合(法基通9−3−6の2) <1> 法人の経理と税務 法人が役員・使用人のために支出した保険料のうち,養老保険部分(主契約部分)は給与とみなされ,一方,特約保険料部分は福利厚生費として,それぞれ損金に算入される。
なお,一時払の場合は,その全額が賞与となる。 ※上記仕訳において,福利厚生費として処理した傷害特約等の特約の付保にあたり,全従業員を対象として契約はしたが,役員又は部課長その他特定の使用人(略して特定の従業員と以下呼称する。親族を含む。)分についてだけ,その特約にかかる給付金の受取人を当該特定の従業員とするものであるときは,その特約にかかる保険料は当該特定の従業員に対する給与となる。 ところで,被保険者が役員あるいは役員の親族などの特殊関係使用人である場合には,給与とみなされる保険料の額は他に支給される役員報酬・給与と合算され,これが適正額を超える場合は,その超える部分について損金不算入の適用を受けることがあるので注意を要する(法法34,法令69,法法36の2,法令72の2〜3,法基通9―2―10,同9―2―11)。 (注) 年払・半年払の保険料でも役員に対し毎期継続的に負担されているものであれば賞与でなく報酬とみなされる。 ? 被保険者の税務(所基通36−31,同36−31の4) 法人が負担した保険料は養老保険部分は給与扱いとなり,所得税の対象となる。特約保険料部分は福利厚生費として処理されるので課税関係を生じない。ただし,役員等特定の従業員のみを特約の給付金の受取人としている場合は給与扱いとなる。
(2) 定期付養老保険(法基通9―3―6)・特約付加の場合(法基通9−3−6の2) <1> 法人の経理と税務 法人が自己を契約者とし,役員・使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする定期付養老保険に加入してその保険料を支払った場合には,その支払った保険料の額については,下表のように取り扱われる。
(注) 前項の養老保険解説中の仕訳の下に示した※のところを参照されたい。 前記の契約形態において,定期付養老保険の保険料の額が養老保険部分と定期保険部分に区分されていないときは次のとおり取り扱われる。
? 被保険者の税務(所基通36−31の3) 法人が負担した保険料は上述の2表にも示したとおり,保険料の区分がなされている場合を除き,保険料の全額(定期付養老保険部分)が給与として所得税の対象となる。
(3) 定期保険(法基通9−3−5)・特約付加の場合(法基通9−3−6の2) <1> 法人の経理と税務 法人が負担する定期保険の保険料は原則として全額損金に算入できる。ただし,役員等特定の従業員のみを被保険者とする場合には給与となる。福祉厚生保険型は従業員(役員・使用人)に対する福祉厚生制度の一環として行われるものであり,企業が負担する掛け捨ての定期保険料は福利厚生費とすることができるからである。
(注)傷害特約等の特約を付加している場合の特約保険料の取り扱いについては,既述の(1)養老保険・特約付加の場合の解説で,仕訳の下部に※をつけて詳しく述べているので,その項を参照されたい。全く同じ取り扱いを行う。
? 被保険者の税務(所基通36−31の2) 法人が定期保険料を負担することによって,役員・使用人がうける利益については原則として課税されない。 (4) 初回保険料の経理処理 <1> 保険料が損金に算入できる(給与処理含む。)場合 初回保険料を仮払金に計上し,責任開始予定日を待って仮払金を取りくずし損金に算入(給与処理含む。)する。 ・初回保険料払込時
・責任開始予定日に到達した時
(5) 保険料の一括払い・前納・一時払い時の経理処理 標題の支払保険料の処理について,資産に計上される部分,損金算入される部分の2通りについては経営者保険型の解説のところで取り上げているので,ここでは給与として損金にできる場合について取り上げる。
(注) この処理については違った考え方も示されているのでも参照されたい。 (1) 現金払い配当の場合 現金払い配当を受けたときは,益金の額に算入することになる(法基通9−3−8)。
(2) 相殺配当の場合 契約者配当を,支払うべき保険料と相殺する訳であるから,契約した保険の種類によって,保険料と相殺時に次のように配当金は経理される。 〈養老保険の場合〉
〈定期付養老保険の場合〉 <1> 保険料が養老保険部分・定期保険部分・特約部分に区分されているとき
前記2つの仕訳を合わせると,下記のような仕訳に整理される。
<2> 保険料が区分されていないとき
〈定期保険の場合〉
(3) すえ置配当の場合
なお,すえ置配当には通常,利子が付されているが,この利子の額については,その利子の付いたことを通知された日の事業年度の益金の額に算入することになるので,上記と同じ勘定科目で経理する。
(4) 増加保険の場合 <1> 増加保険金を買い増す時 契約者配当金により,保険金の増額または買い増しをする場合には,その増額または買い増しをする保険の種類に応じて取り扱いが異なる。 〔設例〕 A社では,役員・使用人を被保険者とし,会社が契約者,役員・使用人およびその遺族を保険金受取人とする養老保険契約を甲保険会社と結んでいる。この養老保険契約では,契約者配当金をもって元の主契約と満期を同じくする同型の養老保険を買い増すことになっている。
<2> 増加保険金を受け取る時 法人の経理は発生しない。 増加保険買い増し時に,払込保険料に充当した配当金は従業員の給与となっているので,増加保険金受け取り時には当該従業員の一時所得となる。一時所得の計算は次の項で説明しているので省略する。
(1) 法人の税務と経理(現実にはこうした保険金支払いは少ないと思われる。) 福祉厚生保険型の保険金は,法人を経由して支払われることがある。この場合の経理は……。
役員・使用人またはその遺族に保険金が払い出された時
(2) 受取人の税務 <1> 満期保険金の場合 福祉厚生保険型の満期保険金を被保険者である役員,使用人自身が受け取った時は,個人保険で保険契約者自身が受け取った時と同様,一時所得として所得税が課せられる(所法34,所基通34―1(4))。 一時所得の計算は次のように行う。
一時所得の金額は,確定申告に際し,他の所得と合算する場合,そのを合算すればよいこととなっている。 (注)1.収入金額……満期まで積み立てられた配当金や,配当で買い増しされた増加保険金など,満期保険金と一緒に受け取る金額も加える(所令183?一)。 <2> 死亡保険金の場合 役員,使用人が死亡し,福祉厚生保険型の死亡保険金をその遺族が受け取ったときは,個人で保険に加入していた場合(契約者・被保険者が被相続人で,受取人が相続人の場合)と同様,相続により死亡保険金を取得したものとみなされ,相続税の課税対象になる(相法3?一,相基通3−17)。 <3> 障害給付金,入院給付金等 自己の身体の傷害に基因して支払いを受ける障害給付金,入院給付金等は非課税扱いとなる(所令30一)。そして,その支払いを受ける者が,その身体に傷害を受けた者の配偶者もしくは直系血族又は生計を一にするその他親族であるときも非課税扱いとなる(所基通9−20)。
(1) 失 効 <1> 法人の経理と税務 保険契約が失効した場合,現実に保険料の支払いはないのであるから経理処理は不要である。 <2> 被保険者の税務 現実に保険料の支払いがない限り,みなし給与として課税されることもなく,また生命保険料控除を受けることもできない。 (2) 復 活 <1> 法人の経理と税務 保険契約を復活した場合,支払った保険料は保険料区分がなされている場合を除きその全額がみなし給与として,損金に算入できる。特約保険料部分は原則として損金に算入される。ただし,役員に対して過大報酬とみなされる額が支払われたときは損金不算入となる場面も生じてくる。(この第2項「支払保険料について」を参照) <2> 被保険者の税務 支払われた保険料は,みなし給与となった部分に所得税が課せられる。また,その全額が生命保険料控除の対象となる。
(1) 法人の経理 福祉厚生保険型の保険料は被保険者に対するみなし給与として処理されており,その意味では解約返戻金は被保険者に帰属すると考えられる。しかし,約款上の解約返戻金請求権者は契約者(法人)であるので,被保険者には請求権はない。 解約返戻金受け入れ時の仕訳は次のとおり。
もし法人が,解約返戻金を被保険者に支払うつもりならば、契約者を被保険者に変更してから解約すれば,この問題は避けられる。 (注) 上記処理に関連して,「源泉所得税の実務」(62年版・納税協会連合会発行)では大要次のように述べられている。 【問】 当社では,契約者が当社で被保険者及び保険金受取人が従業員である生命保険契約(55歳満期養老保険)に加入した。 【答】 一般に,使用者が負担した保険料が給与として課税されるのは,従業員がその負担額に相当する金銭給与の支給を受け,その金銭をもって保険料を支払った場合と経済的効果が同じであるからである。
(1) 法人の経理と税務 法人は減額返戻金の受け入れの経理処理を行う。
みなし給与(報酬)として役員・使用人が実質的には保険料を負担しているのであるが,減額返戻金請求権者は契約者(法人)である。
(1) 法人の経理と税務 払済保険,延長定期保険への変更の場合は,既払込保険料が給与処理されているので,特別の経理処理は必要ない。また,税務上も何ら課税関係は生じない。
(2) 被保険者の税務 払済保険,延長定期保険への変更は,単なる変更に過ぎないと考えられるので,課税関係は生じないと思われる。
みなし給与として実質的には被保険者が保険料を負担するので,転換後はみなし給与の額が増えるにすぎない。また,この増加部分については,毎期の給与が増加したと考えることができるので,賞与とはならず給与になると考えられる。
役員・使用人が他社に転籍,もしくは退任,退社に伴い,当該者の保険契約を契約者変更した場合は次の通りになる。 (1) 法人Aから法人Bへの変更
<1> 法人A,法人Bの経理と税務 福祉厚生保険型の保険料は,支払いのつど損金経理されており,変更に伴う経理処理は不要であるが,取りくずした配当金積立金は次の2通りの方法で経理処理をすることになる。 i)有償で譲渡する場合 ii)無償で譲渡する場合
一方,転籍後の法人Bは,配当金積立金の受け入れの経理処理を行う。
なお,変更後の保険料については,転籍後の法人Bにおいて給与等の損金処理をすることになる(役員に対し過大報酬となる部分は除く。)。 <2> 被保険者の税務 課税関係は生じない。
(2) 法人から被保険者(=役員・使用人)への変更
<1> 法人の経理と税務 福祉厚生保険型の保険料は,支払いのつど損金経理されており,変更に伴う経理処理は不要である。しかし,退任・退職に伴う契約変更時に配当金が資産計上されておればそれを取りくずし,損金の額に算入する。
この場合,支払保険料についてはすでに給与課税が行われているので、積立配当金等の受取人が法人から個人に移ったことにより、従業員への経済的利益の供与があったとみなされることはない。 <2> 被保険者の税務 課税関係は生じない |
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