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1.契約者=法人/受取人=法人の契約(経営者保険型・退職金保険型)の仕組み
(1) 定 義 一般的に事業保険扱いの契約のうち,経営者保険・退職金保険等がこれに該当する。 (2) 契約の形式(経営者保険・退職金保険等)
(1) 養老保険(法基通9−3−4)・特約付加の場合(法基通9−3−6の2) ? 法人の経理と税務 法人が,自己を契約者とし,役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする養老保険に加入してその保険料を支払った場合,生存・死亡両保険金の受取人がその法人であるときは,その支払った保険料の額は,保険事故の発生又は保険契約の解除若しくは失効によりその保険契約が終了するまで資産に計上する。 いまこの関係を一表にまとめると次のようになる。
〈仕訳例〉
? 被保険者の税務 被保険者にとっては,契約者・受取人がともに法人であるから,みなし給与として課税されることはない。従って,支払保険料は被保険者の生命保険料控除の対象にならない。
(2) 定期付養老保険(法基通9−3−6)・特約付加の場合(法基通9−3−6の2) ? 法人の経理と税務 法人を,契約者・受取人(生存保険金・死亡保険金・特約給付金とも)として,役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする定期付養老保険に加入してその保険料を支払った場合には,その払込保険料が生命保険証券等(たとえば保険料払込案内書)において養老保険部分と定期保険部分とに区分されていると,養老保険部分の保険料は資産に計上,定期保険部分の保険料は損金に算入することができる。 (注) 一定の条件に該当する長期平準定期保険等特約の保険料については,損金算入を制約する旨を定めた通達が出されている。 以上を整理すると下表のようになる。特約保険料の取り扱いも便宜上併記した。
上記の契約の形態で,養老保険部分と定期保険部分の保険料が生命保険証券等で区分されていない場合は,定期付養老保険の保険料全額が資産計上となる。
〈仕訳例〉 B社では,法人が契約者・受取人(生存保険金・死亡保険金・特約給付金とも)となり,役員又は使用人を被保険者とする定期付養老保険に加入している。このたび保険料払込案内書が送られてきて,払込保険料総額100万円,うち定期保険部分の保険料50万円,傷害特約部分の保険料10万円と明記されていた。この保険料支払いの場合の仕訳は次のように行う。
? 被保険者の税務 被保険者にとっては,契約者・受取人がともに法人であるから,みなし給与として課税されることはない。従って,支払保険料は被保険者の生命保険料控除の対象にならない。
(3) 定期保険(法基通9−3−5)・特約付加の場合(法基通9−3−6の2) ? 法人の経理と税務 法人が,自己を契約者・受取人(死亡保険金・特約給付金とも)とし,役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする定期保険に加入してその保険料を支払った場合には,その支払った保険料の額は,保険期間の経過に応じて(年払い,月払いなどは払い込みの都度)損金に算入することができる。 (注) 一定の条件に該当する長期平準定期保険等については,損金算入を制約する旨を定めた通達が出されている。
以上を整理すると下表のようになる。
? 被保険者の税務 法人が負担した保険料は被保険者である役員又は使用人の給与にはならない。
(4) 傷害特約等の場合(法基通9−3−6の2) ? 法人の経理と税務 法人が自己を契約者・受取人(生存保険金・死亡保険金・特約給付金とも)とし,役員又は使用人を被保険者とする生命保険に加入した場合は,以上述べてきたとおりである。ところで法人が自己を契約者とし,生存保険金と死亡保険金の受取人を法人とし,役員又は部課長その他特定の使用人のみを特約給付金の受取人にした場合はどうなるであろうか。昭和55年12月の直法2−15ではこの場合特約保険料は損金算入できた。しかし,昭和59年12月の直法2−3による改正で,特約の受取人を役員又は部課長その他特定の使用人のみにした場合は,その被保険者である役員又は部課長その他特定の使用人の給与扱いにすることになった。
法人がこのような契約に加入していた場合,昭和60年12月までは従来通り損金算入できたが,昭和61年1月からは給与扱いになったので,法人が特約保険料も損金算入を希望する場合は特約給付金の受取人を法人とする変更手続きが必要となった。
(5) 保険料の一括払い・前納・一時払い時の経理処理 標題の支払保険料の処理については,資産に計上される部分,損金に算入される部分の2通りが考えられる。 ? 資産に計上される部分の処理 支払保険料のうち,支出の日の属する事業年度内の保険期間に対応する保険料を保険料積立金に資産計上し,未経過保険料については前払保険料として資産計上,新事業年度を迎えてその事業年度に対応する保険料を保険料積立金へ振り替えるのがたてまえであるが,前払保険料も保険料積立金もともに資産勘定であるから,保険料払込時にその全額を保険料積立金として経理処理することもできる。
? 損金に算入できる部分の処理 1年分を限度とする一括払いや前納保険料については,短期の前払費用(法基通2-2-14)としてその全額を支払いの日の属する事業年度の損金に算入できる。ただし,継続性のない一括払いや前納についてはこの取り扱いが認められないことも考えられる。
(1) 養老保険の場合 ? 現金払い配当 法人が生命保険契約に基づいて支払いを受ける契約者配当金は,その配当を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入することになっているが,法人を契約者・保険金受取人(生存・死亡とも)とする養老保険のようにその契約にかかる保険料を全額資産計上しているものについては,その契約者配当金を資産に計上している保険料の額(保険料積立金)から控除することができることになっている。
? 相殺配当 相殺配当の場合は,配当金を差し引きした実際払込保険料額を資産に計上すればよいこととなる(法基通9-3-8)。
? すえ置配当 法人が生命保険契約に基づいて支払いを受けるすえ置配当については,その契約者配当金(この項では「配当金積立金」と呼ぶ。以下同じ。)を資産計上している保険料積立金から控除する。
積み立てられた配当金を引き出した場合には,対応する資産をとりくずせばよい。
? すえ置配当の利子(配当金積立金の利子) すえ置配当の利子については,その通知のあった日の属する事業年度の益金の額に算入することになっている。
? 増加保険(増加保険金を買い増す時) 契約者配当金の額をもっていわゆる買い増し増加保険の保険料に充当することとしている契約では,いったん契約者配当金を受け取ったうえで(配当金として受け入れ,資産計上額から控除する形をとる。),直ちにこの配当金の額を増加保険の保険料の支払いに充当したということにほかならない。
i)養老保険の買い増し
ii)定期保険の買い増し 買い増し定期保険に充当される契約者配当金を,?その事業年度に対応する部分(定期保険料)と?その他の保険料部分(前払費用)に区分し,次のように仕訳される。
上記の仕訳を整理すると次のような仕訳となる。
iii)定期付養老保険の買い増し 買い増し定期付養老保険(保険料区分済)に充当される契約者配当金を?養老保険部分に充当する保険料部分(保険料積立金)?その事業年度に対応する定期保険保険料部分(定期保険料)?次年度以降に対応する定期保険保険料部分(前払費用)に区分し,前述のi)とii)を参考にその仕訳を整理すると次のようになる。
〈設例〉
? 配当超過の場合の取り扱い 配当金が表定保険料を超過した場合,相殺配当契約では一般に契約者の承諾をえて超過配当金(配当金−表定保険料)を積み立てておき,以後の保険料の払い込みは中止される。この場合の経理処理は次のとおり行う。
(2) 定期付養老保険の場合 ? 現金払い配当 定期付養老保険の契約者配当金の取り扱いは,保険料区分のなされている契約の場合と,保険料区分のなされていない契約の場合とで異なっており,保険料区分がなされている契約の場合は配当金全額を益金算入し,保険料区分がなされていない契約の場合は保険料積立金勘定として資産計上している額から配当金を控除できることとなっている。
? 相殺配当 保険料区分が行われている場合,配当金については,通知を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入する。払込保険料の仕訳は養老保険部分と定期保険部分に分け経理処理する。なお,保険料が区分されていない場合,保険料積立金(資産計上)から配当金を差し引くことができる。 〈設例〉払込保険料が養老部分と定期部分に区分されている場合
? すえ置配当
? すえ置配当の利子(配当金積立金の利子) 前項の養老保険の取り扱いに準じる。
? 増加保険
(3) 定期保険の場合 ? 相殺配当,現金払い配当 相殺配当,現金払い配当のいずれの場合も,配当金はその通知をうけた日の属する事業年度の益金の額に算入される。下記の仕訳は現金払い配当の場合を示す。
? すえ置配当 すえ置配当金は,その通知をうけた日の属する事業年度の益金の額に算入する。
? すえ置配当の利子(配当金積立金の利子) 養老保険のすえ置配当の利子の取り扱いに準じる。
(1) 法人の経理と税務 法人が満期保険金を受け取り,役員・使用人に退職金として支払った場合の経理処理は次の通りになる。 ? 満期保険金等を受け取った時 それまでに支払ったその契約の保険料総額(ただし,当該契約について保険料積立金(配当金積立金を含む。)として計上されているもの)を資産からとりくずし,受け取った満期受取金(=満期保険金+増加保険金+満期時配当金)と保険料積立金(配当金積立金を含む。)との差額を雑収入として益金に算入する。これが保険差益である。
保険差損(営業外支出につき雑損失が適当)が生じた場合は次のようになる。
? 受け取った満期時受取金を役員・使用人に退職金として支払った時 支払った金額は退職金として損金経理する。ただし,被保険者が役員の場合には,損金算入に限度があるので注意を要する。
(注) 上記仕訳のなかの「預り金」は,法人が退職所得の源泉徴収義務を有するので,その退職所得の源泉徴収税額。この税金(預り金)は翌月10日までに次のとおり処理する。
(1) 法人の経理と税務 被保険者である役員や使用人が死亡し,その死亡保険金を法人が受け取り,その死亡保険金を死亡退職金または弔慰金として役員・使用人の遺族に支払った場合の経理処理は次の通り。 ? 死亡保険金を受け取った時 それまでに支払ったその契約の保険料総額(当該契約の保険料積立金)を資産からとりくずし,受け取った死亡保険金と保険料積立金との差額を雑収入として益金に算入する。
(注1) 保険差損が生じたときは,雑収入(貸方)に代えて雑損失(借方)とする。
(注2) 死亡保険金の益金算入時期 ? すえ置配当の配当金積立金(配当金利子含む。)を受け取った時未計上の配当金積立金の利子があれば雑収入として受け入れる。
? 受け取った死亡保険金を被保険者の遺族に死亡退職金および弔慰金として支払った時 弔慰金として支払った金額は社会通念上妥当なものであれば,損金に算入できる。
(2) 受取人の税務 ? 死亡退職金 死亡退職金は相続または遺贈により取得したものとみなされ,相続税が課せられるが,受取人が相続人である場合は法定相続人1人について500万円まで非課税となる(相法3?二,同12?六)。 ? 弔慰金 相続税法上,弔慰金は非課税扱いとなるが,ある一定限度を超えると退職金とみなされ,課税される(相基通3−20)。
被保険者である役員や使用人に対し高度障害になったことにより高度障害保険金が支払われた場合,約款の定めるところにより直接被保険者にこの保険金が支払われるものと,契約者である法人に支払われるものの2通りがある。
一般に経営者保険では受取人は満期・死亡とも法人となっているから,契約者である法人は,それまでに資産に計上していた当該契約の保険料積立金(資産勘定)をとりくずし,これを雑損失として損金に計上する。この場合,高度障害保険金とともに配当金積立金などがあれば被保険者である役員・使用人に直接支払われるので,法人が配当金積立金を資産に計上していた場合は,これもとりくずし,同額を雑損失として損金に算入することになる。
高度障害保険金を,被保険者本人,あるいは被保険者の配偶者もしくは直系血族又は生計を一にするその他親族が受け取ったときは,全額非課税扱いとなる(所法9?十六,所令30一,所基通9-21)。
死亡保険金を受け取ったときと同様に,それまで資産に計上してきた保険料積立金等をとりくずし,受け取った高度障害保険金と保険料積立金等との差額を雑収入(雑損失)として益金(損金)に算入する。受け取った高度障害保険金の一部を見舞金として役員・使用人に支払ったときは,原則として福利厚生費として処理する。
被保険者である役員や使用人の傷害等により,障害給付金,入院給付金等が支払われる場合,約款の定めるところにより直接被保険者にこれらの給付金が支払われるものと,契約者である法人に支払われるものの2通りがある。そこで,この両者に分けてその経理処理を述べていく。 ●受取人が被保険者本人の場合 ? 被保険者である役員や使用人の傷害等により,障害給付金,入院給付金が法人を経由して役員・使用人に直接支払われる場合の経理処理は次のように行う。
? 法人を経由した給付金が役員・使用人に支払われた時
受取人である役員・使用人にあっては,自己の身体の傷害に基因して支払いを受ける障害給付金・入院給付金は非課税扱いとなる(所令30一)。
●受取人が法人の場合 ? 障害給付金,入院給付金を受け取った時 受け取った額を雑収入として益金に算入する。
? 受け取った障害給付金,入院給付金を役員・使用人へ支払った時 支払った額は原則として(社内慶弔規程を尊重)損金に算入される。
見舞金を受け取った役員や使用人は,その額が社会通念上妥当な額であれば非課税となる(所基通9−23)。
契約者貸付を受けた場合の経理処理は次のように行う。
また,契約者貸付を返済した場合の経理処理は次のように行う。
契約者貸付を受けている間に,死亡・満期・解約等があった場合は当該契約の保険料積立金をとりくずし,契約者貸付の元利金を精算し,受取額(元利金精算分を含む。)と保険料積立金との差額を雑収入,もしくは雑損失として処理する。
保険料の自動振替貸付(以下「自振」という。)を受けられる契約については,保険料支払額そのものが資産計上されており,自振を受けた時点では経理処理を行わず,契約消滅時,契約転換時の精算時点で調整を行うといった簡便法も考えられるとされているが,一般には自振通知のつど,借入金として負債に計上し,その借入金による保険料については,一般の保険料の処理と同様に処理することとなる。
(注1) 仕訳例は養老保険の場合によったが,定期付養老保険で保険料区分がなされている場合は,保険料積立金のほかに,費用の発生として定期保険料(特約保険料含む。)をたてなければならない。 (注2) 自振利息は,利息前取り方式がとられていることによる。 自動振替貸付金の次期以降の利息は,保険料払込猶予期間の満了ごとに利息の繰り入れが行われるが,繰り入れ通知を受けた法人は次のような経理処理を行う。
自動振替貸付金を返済したときは
(注) 支払利息は,自振貸付金が利息前取り方式によっているために未経過利息が発生する場合がある。この払い戻し金を支払利息の取り消しとして貸方記入する。次期以降の利息繰り入れが保険料払込猶予期間満了時となっているために未払利息が発生することもある。この場合は支払利息として損金に算入(借方記入)する。 なお,自振中に死亡・満期・解約等があった場合は当該契約の保険料積立金をとりくずし,自振貸付金は精算するとともに差額を雑収入もしくは雑損失として処理する。
(1) 失 効 保険契約が失効した場合,その時点では現実に保険料の支払いは行わないのだから経理処理は不要である。
(2) 復 活 保険契約を復活した場合,支払った保険料は次のように経理処理する。
保険契約の解約についての経理処理は,解約返戻金を受け入れると同時に当該契約の保険料積立金をとりくずし,受取額との差額を雑収入もしくは雑損失で処理する。
保険期間の途中で,養老保険や定期付養老保険に定期保険特約を途中付加したり増額し,保険料を支払ったときは,もと契約の保険料を含めて,次のとおり経理処理を行う。
保険期間の途中で,疾病関係特約を途中付加・増額し,保険料を支払った場合,次のとおり経理処理を行う。
(1) 減額時の経理処理 減額は契約の一部解約と考えられ,返戻金もあることから,養老保険等の場合は保険料積立金をとりくずし,定期保険の場合は雑収入とすることが妥当と考えられる。 (養老保険)
(定期保険)…減額返戻金があれば,その金額を雑収入とする。
(2) 減額時の契約者貸付,自動振替貸付の取り扱い(養老保険等の場合) 一般に,減額時には契約者貸付,自動振替貸付の精算を行うこととなっているので,法人側も貸付金返済の経理を併せてすることになる。
(注) 未経過利息のあった場合
(1) 延長定期保険へ変更時の経理処理 「延長定期保険」とは,保険契約をもとの保険金と同額の定期保険に変更することをいい,変更後は保険料の払い込みは行われず,保険契約の転換とは区別される。この場合には,変更時における責任準備金に相当する金額をもって一時払いの定期保険の保険料に充当され,これに応じて算定された保険期間について変更前と同じ保障が行われることになるが,保険金は死亡保険金のみであって満期保険金のないのが原則である。しかし,一時払いの定期保険の保険料に充当したとした場合に算定される保険期間の末日が当初の契約の満期日後になる場合には,その延長定期保険に係る保険期間は当初の契約の満期日をもってとどめるため,保険料の余分が生ずるが,これについては,生存保険金として支払われている。
すなわち,従来の契約を解約し,解約返戻金で延長定期保険を購入したと考え,保険差損の計上を認めている。
? 生存保険金がある場合 たとえば,既払込保険料(資産計上額)100万円の契約を延長定期保険に変更した場合,変更時の解約返戻金が70万円,延長生存保険金が40万円だったとしよう。
この場合,70万円の保険料積立金は契約消滅時まで資産に計上し,延長定期保険消滅時にとりくずすこととなる。 なお,上記は昭和47.3.9直審4−13(前掲)に基づく処理であるが,この処理では資産計上額が実体に比し過大となること,および,昭和55.12.25の法人税基本通達の改正で税務当局の定期付養老保険支払保険料に対する取り扱いに昭和47年当時と変化が生じていること等から,私見ではあるが,次のような処理も考えられるのではないだろうか。
? 生存保険金がない場合 前払費用として,変更後の延長定期保険の経過に応じて損金に算入する。
(2) 延長定期保険変更時に契約者貸付,自動振替貸付があった場合の経理処理 一般に延長定期保険変更時に契約者貸付,自動振替貸付などがあったときは,これを精算することになっているので,次のように経理する。
(1) 払済保険への変更時の経理処理 払済保険については,従来は「既往の資産計上額を再評価する必要はなく,そのまま保険事故の発生または解約・失効等により契約が終了するまで資産計上を継続する」とされていた。しかし,平成14年2月15日付の法人税基本通達の一部改正(課法2−1,課審4−25)により,法人税基本通達9−3−7の2(払済保険へ変更した場合)が新設され,原則として,その変更時の解約返戻金相当額と既契約の資産計上額との差額を損益として計上し,精算処理(洗替経理処理)を行うこととなった。ただし,養老保険,終身保険および年金保険(定期保険特約が付加されていないものに限る。)から同種類の払済保険に変更した場合は,既往の資産計上額をそのまま計上することも認められる。
保険料の全額が資産計上されているような契約では,既往の資産計上額の方が解約返戻金相当額よりも多くなるケースもある。その場合には,差額が雑損失となる。
(2) 払済保険変更時に契約者貸付,自動振替貸付がある場合
17.減額・延長定期保険・払済保険から原契約への復旧時の払込保険料の経理 復旧時に支払った復旧所要額は,前掲「第2項支払保険料について」の取り扱いに準じて経理処理を行う。払済保険からの復旧については,第2節の「払済保険への変更」を参照のこと。
(1) 転換のときの経理と税務(法基通9−3−7) 法人がいわゆる契約転換制度によりその加入している養老保険又は定期付養老保険を他の養老保険,定期保険又は定期付養老保険に転換した場合には,資産に計上している保険料の額のうち,転換後契約の責任準備金に充当される部分の金額を超える部分の金額をその転換をした日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。 ? 転換価格をすべて,転換後契約の養老保険部分の一時払保険料に充当する方法 ? 転換価格を転換後契約の養老保険部分と定期保険部分とに分割し,それぞれの一時払保険料に充当する方法 ? 転換価格をすべて,転換後契約の定期保険部分の一時払保険料に充当する方法 各転換の仕組みを図示すると,次のようになる。
設例を設け,それぞれの方法により転換時の経理処理を示してみる。
〈設例〉養老保険(積立配当)を定期付養老保険(保険期間20年)に転換した場合
※定期保険部分に充当された金額は前払費用として資産に計上,保険期間の経過に応じて,定期保険料として損金に算入していく。
(2) 転換時に契約者貸付,自動振替貸付があった場合の経理処理 契約転換に伴ってこれらの貸付は精算されるので,
(3) 転換後の上乗せ契約 転換後の上乗せ契約部分は,通常の新規契約同様に,法人税基本通達9−3−4から9−3−6により経理を行う。
被保険者たる役員又は使用人が転籍すること等によって,契約者および受取人が転籍先法人へ変更されることがある。この場合には,転籍前の法人で資産に計上してあった保険料積立金をとりくずし,転籍後の法人へ移す必要がある。これには2通りの方法が考えられる。 ? 有償で譲渡する場合 転籍前の法人は,譲渡代金を受け入れ,資産に計上していた保険料積立金をとりくずす(すえ置配当の配当金積立金がある場合は同様にとりくずす。)。この場合,譲渡代金と資産のとりくずし額との差額は雑損失(雑収入)として損金(益金)に算入する。
なお,譲渡代金(権利の評価)としては,変更時の解約返戻金(前納保険料や配当金積立金を含む。)と一般には考えられているが(所基通36−37),譲渡代金より変更時の保険契約の価額(解約返戻金および積立配当金,前納保険料)が大きいとき,その差額が税務上,寄付金となることがあるから,変更時の保険契約の価額をもって譲渡代金とすることが望ましい。
一方,転籍を受け入れた企業では,次の経理を行う。 変更時の保険契約の価額を資産に計上(解約返戻金額を保険料積立金に,積立配当金は配当金積立金に計上)する。
なお,譲受代金より変更時の保険契約の価額が小さい場合,その差額が税法上の寄付金となる可能性があるから,変更時の保険契約の価額をもって譲受代金とすることが望ましい。 ? 無償で譲渡した場合 転籍前の法人は,資産に計上してあった保険料積立金(配当金積立金を含む。)をとりくずす。
一方,転籍後の法人は,次のような経理処理を行う。
(注)この雑収入の金額が転籍前の法人の支出/寄付金とみなされる金額である。
20.退職者などへの契約譲渡(法人→被保険者被保険者・同相続人へ) (1) 法人側からみた税務 契約内容は次のように変更される。
被保険者である退職者に退職金の一部として,又は在籍者に賞与の一部として,保険契約上の権利を譲渡した場合,当該契約の保険料積立金をとりくずすにあたって,保険契約の権利の価額は解約返戻金で評価される(所基通36−37から類推適用)から,積立金との差額は雑損失もしくは雑収入として経理されることになる。
(2) 受取人の税務 退職金として受領した場合は退職所得として,賞与として受領した場合は給与所得として所得税が課せられるが,退職所得もしくは給与所得としての,保険契約の税法上の価額(生命保険に関する権利の評価額)は「その契約を解約したとした場合に支払われる解約返戻金の額(前納保険料,配当がある場合には,これらも加算する。)」によって評価される(所基通36−37)。従って,退職所得の一部として受け取った保険契約の価額は50万円として評価されて所得税の税額計算が行われる。 21.個人契約の譲り受け(役員役員役員・被の遺族から法人へ) 定期付養老保険の損金メリットを生かすため,役員が役員個人を契約者としている契約を役員の勤務している法人に契約者変更をした。
役員個人の加入している生命保険を法人に契約者変更した場合には,有償で譲渡する場合と寄付する場合の二とおりの方法があると考えられる。 ? 有償で譲渡する場合 役員の勤務している法人は,保険契約の価額(解約返戻金相当額)で譲り受けるのが通常であるが,その場合は次のとおり資産計上する。
一方,生命保険を有償で譲渡した役員は,解約返戻金相当額の譲渡価格が既払込保険料を上回れば一時所得として課税され,下回れば課税はない。 ? 無償で寄付した場合 役員の勤務している法人は,変更時の解約返戻金相当額(積立配当金を含む。)の受贈益が立ち,益金算入が必要である。
一方,生命保険を無償で寄付した役員は,課税関係は発生しない。
22.受取人変更(法人から満期・死亡保険金受取人とも被保険者・同遺族へ) 従業員福祉の充実のため次のような受取人変更が行われた。
(1) 法人の経理と税務 法人は満期保険金と死亡保険金に対する権利を失うことになるから,保険料積立金をとりくずす。これらの権利を取得したとみられる被保険者に対しては,変更時の解約返戻金(所基通36−37)相当額が給与として上積みされる。ただし,役員の場合は役員賞与として損金に算入できないから注意を要する。
また,契約内容変更後の保険料は給与等として損金処理を行う。 (注) この受取人変更のケースでは,保険契約者はなお法人であるため,保険契約者としての諸権利は形式的には法人に帰属する。しかし,次節の福祉厚生保険の例からみても法人はむやみにその権利を行使すべきではない。
(2) 被保険者の税務 法人において,給与として処理された額が給与所得として所得税の課税対象となる。
23.受取人変更(法人から死亡保険金受取人を被保険者の遺族へ) 従業員福祉の充実のため次のような受取人変更が行われた。
(1) 法人の経理と税務 処理を行わない。なお,変更後の払込保険料の処理は法基通9−3−4,同9−3−6による。 (2) 被保険者の税務 課税関係は生じない。
事業保険扱いの団体については,一般に保険料(配当金相殺後)の3%以内の団体手数料が支払われる。これは収入時,すなわち,保険料支払い時の雑収入に計上する。
法人税基本通達9−2−19によると,「法人が退職した役員または使用人に対して支給する退職年金は,当該年金を支給すべき時の損金の額に算入すべきものであるから,当該退職した役員または使用人にかかる年金の総額を計算して未払金等に計上した場合においても,退職の際に退職給与引当金勘定の金額をとりくずしているといないとにかかわらず,当該未払金等に相当する金額を損金の額に算入することはできない」となっている。
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